目下、インフォデミックとしてのコロナ禍の真っ只中といったところですが、読者の皆さまの心身は健康でおられますか?
インフォデミックの基本的な定義は、ネット上で根も葉もない出所不明の情報が広がることや、それによる混乱を指すようですが、主流メディアを通じて見聞きする政府や行政、医師会などの利権団体から発信される情報のほうが、むしろバランスを欠いているのは、10年前の福島第一原発事故のときと同じ構図であると考えます。この根っこで、「この話は科学的である、科学的でない」との応酬があるわけですが、専門家と称される人たちの見解にも常に同じく専門家が唱える逆説があります。しかし主力メディアは規制や処分を恐れ、その一方の見解を大きく取り上げるスタイルが当たり前になってしまいました。
かといって、メディアの伝えることは全部嘘である、陰謀が渦巻いていると判断するのは早計すぎ、とりわけインターネット(とくにYouTube)では、一つの動画を閲覧すれば関連する動画として似たような見解を述べる動画再生の連続が起きます。気がついたら、世間はすべて敵ばかりにみえてしまう病的な状態に陥ることもまた不調和を招き、生きづらくなるだけですので、注意が必要です。聡明な読者の皆さまにはこのような心配は不要ですが、周りの方がどちらに転んでも極度な不安を心の根っこに抱え、他人を攻撃しているようでしたら、しばし、その方とは距離を置かれることをおすすめします。
これだけが正しい、他は間違っているという考え方では、穏やかさは得られず、また健康に過ごすことができません。私の場合、真理は人の数だけあると思って生きてきましたので、なにかが絶対正しいという物言いからは必ず距離を取り、極端にならないよう気を配っています。同時に、私の考え方自体が正しいとも間違っているとも評価しないようにしていますので、自然食屋としては曖昧な物言いなのかもしれません。むしろ、普通の人の感覚で生きていますので、なにも攻撃しないのはつまらないかもしれませんが、このあたりはご容赦ください。
無数に〝伏線〟を張る
そんなことを考えている折に、素敵な方とお会いしました。弊社では、以前から自社で物流センターを備え、その多用途化、たとえば周辺地での農業や食品製造やイベント開催なども視野に入れた施設を作りたいと考えてきましたが、この数年、いろいろなことがあって頓挫していました。この1年ほどの社会状況の激変にあって、金融機関としては柔軟にこの難局に対応する企業に支援したいという気持ちが大きいのか、メインバンクの支店長が積極的に物件を提案してくださるなか、ある土地開発企業の会長とお会いしたのです。
その方は御年79歳の清水三雄会長です。会長は、京都では土地関係で複数の会社を経営されると同時に、市内には空港はおろか、ヘリポートもないと嘆く市長の記事を見て、自社でヘリポートを建設、それだけではもったいないと、74歳でヘリの操縦訓練を開始し、77歳で免許まで取得されました。その後には回転翼機操縦の免許も取っておられます。本業は土地開発ですから、上空からクライアントに候補の土地を見せ、「このあたりをこうしましょう」と商談されていると伺いました。
初回の対面はほんの40分ほどのことでしたが、その「関連することで、世の中が良くなることはなんでもやる」姿勢に圧倒されました。私の自己紹介もできなかったので、「紙のほうが読みやすいかな」と、会社の計画についての書面や、本誌「らくなちゅらる通信」のバックナンバーを会長に郵送しましたが、その翌々日にはメールで返事が返ってきて、またびっくり。書面のほうがいいだろうというのは、完全な思い込みだったのです。
また会長が『ニューズウィーク』のインタビューに答えられている際の最後の一文が、印象的なのです。
「人生は一度きりです。生活するために最低限のお金は必要ですが、仕事以外のことも同時進行でやっていく。その中から新しい可能性が生まれてきますし、人生もより充実したものになるはずです。強い者が生き残るのではなく、変化に順応出来る者が生き残る、まさにそういう時代が到来していると思います」
私自身も同じように考えて、この数年、ド素人からのジェラート作りや料理店のレシピ設計、建築のイロハの勉強や宅建士の受験から合格、電磁波対策の基礎となる電気工事士のそれなどに続々チャレンジはしてきましたが、会長に比べれば50歳なんてまだ序の口でしょう。私たちの多目的物流拠点の未来はまだ見通せませんが、会長とお付き合いしていれば確実になにかが進む予感がします。また清水会長が手がけている耕作放棄地での農業プロジェクトの視察にもお誘いいただき、夢は広がります。「不安に打ちのめされ、なんでも人のせいにしてしまうのは、繰り出す手数が少なく、歩みも足りないから」。会長を見ていると、そう身につまされます(と、今、ここまで書いたところでまさに清水会長からお電話いただきました!)
偶然と呼ぶにはもったいないこの出会い。清水会長にもまたぜひ本誌に登場していただいて、幸せへのヒントをお教えいただきたいと思っています。