今号ではプライベートガイドでご案内する島野菜農家の上地宏明さんをご紹介します。にがうり・インゲン・かぼちゃ・冬瓜・サトウキビ・ドラゴンフルーツ・パパイヤ・バナナなど、年間通じて多品目を生産、出荷されています。野菜品評会で県内最高賞の農林水産大臣賞(金賞)を受賞(2018年 サヤインゲンの部)する模範農家として、宮古島の農業振興にも貢献されています。私の宏明さんの印象は、「自然観察眼が鋭く探求心が旺盛で、動物好き」、「休みなく常に忙しく動いておられる超絶がんばり屋さんで、儲かる農業を冷静に追及されている」というものです。
最近、宏明さんに見せてもらって仰天したパパイヤの栽培技術をご紹介します。パパイヤは台風に弱い作物なので、従来は成長途中で根っこを切って幹を倒し、地面に這わせるように低く仕立てて、台風の影響を緩和すると同時に作業性を高めることが有効とされています。しかし、宏明さんがチャレンジした方法は、成長途中のパパイヤの幹に十文字に切り込みを入れて、幹を捻り倒して横に寝かせる方法です。とても荒っぽく見えるのですが、確かに腰下の低い位置でパパイヤはたわわに実をつけています。切り込みの入った幹は傷口が癒えていき、パパイヤの樹勢は大きく衰えないそうです。従来の根切りの方法は、人に置き換えて考えてみると、内臓裂傷でかなり重症のイメージです。それに対して宏明さんの幹に切り込みを入れる方法は、腕の切創程度のイメージでダメージが小さく、確かに理に叶っているように思いました。
長年、宮古島の自然を観察し、遊び心でさまざまな探求と実践を続ける宏明さんは話題豊富で、現場でお話を伺うと時間が経つのを忘れてしまうほど。「ニガウリのツルはなぜ、巻き方向を途中で反転させるの?」「宮古島にハブがいない理由は?」など、興味津々で聞き入ってしまいます。
歴史を顧みて、将来の可能性を模索しつつ、足元の仕事を確実にこなす。厳しい毎日を自身に課しているから、力強く、明るく、楽しい農業を続けてきておられるのだと思います。
いつもやさしさと強さを感じる宏明さんの笑顔