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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

東京高裁 令和4年3月11日判決

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先月号のコラムでは、優生保護法被害をめぐり、全国各地で提起されている国家賠償請求訴訟に関して、令和4年2月22日に大阪高等裁判所で、同年3月11日に東京高等裁判所で、それぞれ被害者の方の国家賠償請求が認められたことを紹介しました。

そして、先月は、そのうち、大阪高裁判決について具体的にご紹介しましたので、今月は、東京高裁判決の内容についてご紹介したいと思います。

除斥期間

先月号と先々月号でもご紹介しましたが、もう一度、優生保護法被害をめぐる訴訟における最大の問題について、おさらいをしておきたいと思います。それは、除斥期間の規定です。

除斥期間とは、権利行使をしなければならない期間のことであり、その期間を過ぎると、権利の行使ができなくなります。不法行為の場合には、その期間が20年間と定められています(改正前民法724条後段)。そして、優生保護法による被害が発生したのは20年以上前のことです。したがって、除斥期間の規定が無条件に適用されると、被害者の方々の賠償請求は認められないのです。

この問題で除斥期間の適用を制限し、初めて被害者の方の賠償請求を認めたのが、先月紹介した大阪高裁判決でした。そして、東京高裁判決もまた、除斥期間を無条件に適用することなく、被害者の方の請求を認めましたが、その論理は大阪高裁のそれとは異なるものでした。

優生保護法被害の特殊事情

東京高裁は、まず、優生保護法被害に関する事情の特殊性を指摘しました。具体的には、優生手術が憲法違反の法律に基づき実施されたこと、被害者の方は差別を受けたうえで、その意思に反して強度の侵襲を伴う不妊手術を受けさせられたこと、被害者の方が二重、三重にも及ぶ精神的・肉体的苦痛を与えられたことなどが指摘されました。

また、東京高裁は、国が優生保護法制定当初から優生手術を推進し、教科書にも優生思想を正当化する旨の記載をしているなどの事情があり、国の施策によって手術対象者に対する偏見・差別が社会に浸透したことも指摘しました。さらに、国が、優生手術の人権侵害性などを認識できたにもかかわらず、平成8年まで優生保護法を改正せず、改正後においても、法律が憲法違反であることを明確に言及しないまま、優生手術は適法である旨の見解を表明し、被害救済のための措置を執らなかったことなどが指摘されました。

そして、東京高裁は、「憲法違反の法律に基づく施策によって生じた被害の救済を、憲法より下位規範である民法724条後段を無条件に適用することによって拒絶することは、慎重であるべきである」、除斥期間の経過という一事をもって国が損害賠償責任を免れ、被害者の権利を消滅させることは、「被害者に生じた被害の重大性に照らしても、著しく正義・公平の理念に反する」などとして、除斥期間を無条件に適用することを否定しました。

結論として、東京高裁は、優生保護法の被害救済のための一時金を支給する法律が施行された平成31年4月24日から5年間が経過するまでは、「民法724条後段の効果は生じないと解するのが相当である」と判断し、被害者の方の賠償責任を認めました。

速やかな救済を

その後、国が上告したため、被害者の方の法的救済には至っていませんが、両高裁判決は、被害者の方の法的救済にとって重要な判決です。被害を受けた方たちの速やかな救済を望みます。

- 法の舞台/舞台の法 - 2022年6月発刊 vol.177

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