最近疲れている患者さんにお伝えしているのは、「『一人でちゃんとがんばる』を続けているとエネルギーが枯渇しますよ」というお話です。多くの日本人に共通する価値観として、『一人でちゃんとがんばる』ことが素晴らしいと教えられてきました。それをできる子は、親や先生に褒められます。だから、子どもは大人からの愛情を得ようと、大人が喜ぶように『一人でちゃんとがんばる』を学んでいきます。しかし、そこで大人が子どもを褒めて育てると条件付きの愛になってしまいます。つまり、それは子どもに対して「愛されるためには、褒められることをしなければならない」というメッセージになってしまうということです。こうして『一人でちゃんとがんばる』は絶対の正義になってしまい、大人になってもなかなか手放せなくなります。
『一人でちゃんとがんばる』によってエネルギーが枯渇するなら、逆のアプローチでエネルギーを充電することができます。具体的には、「一人で」を「甘えて」、「ちゃんと」を「いい加減に」、「がんばる」を「楽しむ」に変換しましょう。つまり、『甘えていい加減に楽しむ』です。すべてを一度にやる必要はありません。少しずつできる範囲から練習してみましょう。
「甘えて」というのは、優しい人に少し頼ってみることです。甘えることは、自分の弱さを見せることです。強がらずに負けを認めることでもあります。ありのままの自分を受け入れ、他人に素直になることです。弱さを見せた後は、その人の前で自分自身でいられるようになります。家庭や職場が自分が安心できる場所になります。もし他人に頼ることが難しければ、自分自身を甘やかしてあげましょう。
「いい加減に」は、適度にやることです。ちょうどいい加減で進めましょう。別の言い方をすると、体調に合わせる、体の声を聴く、本音を優先することです。疲れたら休む、食べたいものを食べる、正しいことより好きなことを選ぶ、嫌いなことから逃げるなど、自分の本音に耳を傾け、自分自身を優先し、自分の感覚に従いましょう。
「楽しむ」は、いつもなにか楽しいことを見つけることです。できそうなことがあれば、今すぐにでも少しでも始めましょう。また、小さな喜びを見逃さずに味わいましょう。花を見たら、1秒でも「きれいな色だな」と感じましょう。食事をするときは、ゆっくり噛んで「美味しいな」と味わいましょう。入浴時には、「気持ちいいな〜! さっぱりしたな〜」と感じましょう。アロマの香りを胸いっぱいに吸い込んで、「いい香り〜癒される〜」と感じましょう。
『一人でちゃんとがんばる』を一生懸命やってきた人ほど、『甘えていい加減に楽しむ』を実践することに罪悪感や自己嫌悪を感じてしまうことに気づくでしょう。実は、『甘えていい加減に楽しむ』を実践してエネルギーを充電することで、初めて『一人でちゃんとがんばる』ことができるようになります。だから、罪悪感や自己嫌悪を感じても「これは『一人でちゃんとがんばる』ために絶対に必要なことだから、やってもいいよ、大丈夫!」と自身に許可を与えることです。罪悪感や自己嫌悪は必要ありません。
『甘えていい加減に楽しむ』というのは、実は子どもの特徴そのものです。私たちも子どものころは、それを自由にできていました。でも、保育園や幼稚園に入るころから、他の人と自身を比べることが始まり、少しずつ『一人でちゃんとがんばる』ことが大事だと教えられてきたのです。
でも、『甘えていい加減に楽しむ』というのは、本来私たちに備わっているのです。それはダメなことではなく、自己否定する必要もありません。自己否定は、エネルギーを消耗させる思考のパターンです。だから、心置きなく『甘えていい加減に楽しむ』を実践してください。