先月号のコラムでは、2022年11月、京都アバンギルドのFOuR DANCERS vol.234というイベントで発表した「Wazawaza Zawazawa」という作品について、ご紹介しました。このときは、ダンサーのHeidi S, Durningさんと、ミュージシャンのryotaroさんとの共演でした。
そして、2023年10月22日、京都市内にある「Bonjour! 現代文明」というイベントスペースで、「Wazawaza Zawazawa」の2回目の公演をおこないました。今回は、Heidiさんと、ミュージシャンの佐々木ゆかさんとの共演でした。
今月は、この時の講演について、ご紹介します。
作品のコンセプト
作品のコンセプトについては、2022年11月の公演と同様です。
具体的には、人と人とが出会って会話が始まり、会話がまた新しい会話を創り、さらにその会話がまた次の会話を生成してゆく……。そうした会話により紡がれる関係を、表現することでした。
ここでの「会話」とは、舞台上で実際に言葉を用いて会話するのではなく、互いに身体や音楽を通じてコンタクトをとるようなイメージです。
また、音楽についても、初回と同様、舞台上で即興的に生み出される音楽によって、ダンサー2人の会話を引き出してもらうことにしました。
衣装も前回と同様、Heidiさんが緑色のジャケット、私が黄色のジャケットを着用しました。
会場の特徴
初回の公演との大きな違いは、会場でした。
初回の会場となった京都アバンギルドは、しっかりとした舞台が設置された空間であり、舞台と客席とが分かれていましたが、今回の会場となった「Bonjour! 現代文明」は、人の生活のための場となることが前提とされている京町家であり、特にダンスや音楽のための舞台が設置されているわけではありません。
また、会場は、京町家特有の縦長の空間であり、庭も備え付けられています。そして、外からは、陽射しや人の声などが流れ込んできます。
そうした特徴のある空間の中で、観客の皆さんには、私たち出演者をぐるりと囲むような形で座ってもらい、そのなかで私たちが踊り、演奏することにしました。
こうした温もりのある町家の空間や、出演者を取り囲むように佇む観客の身体や眼差し、建物の外から差し込む陽光などは、即興的に奏でられる音楽と、音楽に触発されて創られるダンスとともに、作品を構成する重要な要素となりました。
構成
初演の上演時間は30分弱でしたが、今回は、45分程度の上演時間としました。そこで、冒頭、私とHeidiさんのソロの場面を作り、それぞれの身体の特徴を提示したうえで、その後、そうした2つの身体が交錯し、デュオに至るという構成をとりました。
そして、今回は2回公演とし、各回の後、舞台だった空間にテーブルを出し、観客の皆さんとお茶を飲みながら、歓談をしました。その際にいただいた感想は、次回に向けて「Wazawaza Zawazawa」を再構成するための、きっかけとなるに違いありません。
写真:植村 研