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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 
京都市中京区新椹木町通二条上る角倉町215
075-746-5482

最高裁判所大法廷判決②

投稿日:

先月号のコラムで、令和6年7月3日に、優生保護法の被害者の方たちによる国家賠償請求訴訟について、最高裁判所の大法廷で歴史的な判決が言い渡されたことを紹介するとともに、この判決に至るまでの訴訟の経過等について、簡単にご紹介しました。

今月は、この最高裁判決の内容をご紹介したいと思います。特に、今月は、優生保護法の規定が憲法違反であると判断された部分について、ご紹介します。

強制的な不妊手術

優生保護法は、1948年に成立し、1996年まで日本に存在した法律です。この法律には、優生思想を理論的根拠として、障害者に対して強制的に不妊手術をおこなうことなどが規定されており、実際に、そうした強制的な不妊手術が実施されていました。

今回の訴訟でまず問題となったのは、このように、優生思想に基づき強制的に不妊手術をおこなうことなどが定められた優生保護法の規定の憲法適合性(違憲性)でした。

そして、結論として、最高裁判所は、優生保護法の規定が、憲法13条と憲法14条1項に違反すると判断しました。

憲法13条違反

最高裁判所は、「憲法13条は、人格的生存に関わる重要な権利として、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を保障している」と述べて、「不妊手術は、生殖能力の喪失という重大な結果をもたらす身体への侵襲であるから、不妊手術を受けることを強制することは、上記自由に対する重大な制約に当たる」としました

そして、優生保護法の規定の立法目的は、「特定の障害等を有する者が不良であり、そのような者の出生を防止する必要があるとする点において、立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても、正当とはいえないものであることが明らかであり、本件規定は、そのような立法目的の下で特定の個人に対して生殖能力の喪失という重大な犠牲を求める点において、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するものといわざるを得ない」と述べ、結論として、「本件規定により不妊手術を行うことに正当な理由があるとは認められず、本件規定により不妊手術を受けることを強制することは、憲法13条に反し許されないというべきである」と結論付けました。

憲法14条1項違反

また、最高裁判所は、「憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものである」としたうえで、「本件規定は、①特定の障害等を有する者・・・(中略)・・・を不妊手術の対象者と定めているが、上記のとおり、本件規定により不妊手術を行うことに正当な理由があるとは認められないから、上記①・・・(中略)・・・の者を本件規定により行われる不妊手術の対象者と定めてそれ以外の者と区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的取扱いに当たるものといわざるを得ない」としました。

除斥期間の問題

最高裁判所は、以上の判断を前提に、優生保護法の規定が、憲法上保障された権利を違法に侵害することが明白であったというべきであるとして、本件規定にかかる国会議員の立法行為自体が、国家賠償法上、違法であるとしました。

そして、これまでの訴訟で最大の争点となっていた国家賠償請求の時間制限の問題(除斥期間の問題)について、最高裁判所は、画期的な判断をおこないました。この点については、次回以降、ご紹介したいと思います。

- 法の舞台/舞台の法 - 2024年9月発刊 vol.204

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