だれかに勝とうと競争し続けることで、
私たちはみんなで「負ける人」を生み続けている
トランプゲームをすると、人に嫌がられる。例えば「7並べ」。手持ちのカードに6や5があれば、可能な限り「パス」をして他の人のプレイを阻止して勝つのが好きだ。カードを置けないままゲームが終了し、私は「意地悪」だと言われるのだ。
今、夢中になっているトランプゲームがある。「黙示伝授」というこのゲームには「勝ち負け」がない。プレイヤーは4人。絵札やジョーカーなどのカードを取っていくのだが、カードを多く取ることが目的ではない。少しだけルールを説明する。プレイヤーは、配られたカードを見て、「自分が何枚のカードを取るのか」を宣言し、4人で取得するカードの合計が22枚になるように取り決めてからゲームをスタートさせる。そして、全員が宣言した通りの枚数を取得することが、このゲームの唯一のゴールである。そのためには状況を見ながら、他のプレイヤーにカードを取らせてあげたり、カードを取りすぎないように配慮したり、全員で協力する必要がある。それぞれのプレイヤーが目標を達成できるように全員でサポートしていくことで、最終的に全員の目標が達成されるのだ。
例えば、取得するカードを0枚と宣言した人は、「与える」ことが目的となる。他のプレイヤーが目標達成できるように分け与えることで、自身の目標が達成される。また、10枚など多い数を宣言した人は、「受け取る人」となる。他のプレイヤーから存分にカードを受け取らなければ目標を達成できない。ゲームのなかで与える、受け取るという体験をすることで、現実の世界でも、与える人、受け取る人になれるのではないだろうか。そういう意味では、このゲームはセラピーの要素もあるといえるかもしれない。
だれかの行動が、ほかのだれかに与える影響について、「ウイルス感染拡大」から学んだ。だれかに勝とうと競争し続けることで、私たちはみんなで「負ける人」を生み続けている。しかし、それぞれが自分のやりたいことを宣言し、サポートし合えるなら、自身と全員の目標が同時に達成される日がくるのではないだろうか。このゲームはそれを示唆している。
この「黙示伝授」。ゴールするとプレイヤー同士で一体感を感じるそうだが、まだ体験したことはない。黙示伝授を楽しむ一方、勝ち負けのあるゲームで「意地悪」をして楽しみたくなる自分もいる。そんな私が、黙示伝授でゴールを体験するのは、まだ先になりそうだ。
※黙示伝授は、関東や関西、その他の府県でも開催されています。詳しくは、https://g-mania.style/