子どもの「らしさ」を育むために

前回のお話の続きで、子どもに問題が起こったときに、自分のせいだと自分を責めてしまうお母さんがいるかもしれません。でも子どもがせっかく伝えてくれたメッセージで、親が不幸になれば、さらに問題が増えます。気づいたら自分を責めるのはやめて、幸せになることを選択しましょう。そのために自分を縛っている固定観念をはずしましょう。

固定観念のもとは、自分の母親の価値観です。そのまま受け取っている場合もあれば、反面教師として親の価値観の逆を選択している場合もあります。共通しているのは、母親の価値観が基準になっていることです。

子どもは、母親が正しいと言うものを正しいことだと認識し、母親が間違っていると言うものを間違っていることだと受け取ります。当たり前のことのように思いますが、「正しい・間違っている」というのは、時代・経済状況・親を取り巻く環境によって変わります。１００人いたら１００通りの正解があります。

さらにいうと、その瞬間の親の気分によっても変わります。小さい子どもにとって、自分と自分以外の世界は、自分と母親の関係が原点になっています。子どもにとって、母親は絶対的な存在です。母親に認められなければ、生きていけません。母親の背景や状況に関係なく、子どもは母親の言うとおりにその価値観を受け取ります。

幼いころはそれでよいのですが、思春期以降も母親の価値観を握りしめていると、自分らしさを発揮できなくなります。思春期にしっかり反抗できれば、それまで絶対だと思っていた母親の価値観を壊すことができます。

思春期に、母親が病気だったとか、母親が夫や祖父母に虐げられていたり、仕事が忙しすぎたり、子どもに逆ギレするような態度だったりすると、子どもは母親に遠慮してしまい、中途半端な反抗期となってしまいます。母親の価値観を完全に壊すことができないと、母親の価値観を基準にして自分の本音を否定したり、裁いてしまったりします。自己を否定したり、罪悪感を感じたりする癖がつき、満たされない思いを抱えることになるのです。

心がゆるむ方へ

親の価値観は、世間体、常識、人の迷惑、という言葉に置き換わっていることが多く、正しいか誤っているかで判断しています。こんなことをしたらお母さんはなんて言うだろう？　お母さんの機嫌を悪くしないようにしなくてはいけない、と無意識のうちにお母さんに気を遣っています。また成長すれば、逆に自分を苦しめた母親のようになってはいけない、と反面教師にしていたります。自分自身にもその価値観を適用して「ちゃんとしなくてはいけない。頑張らなくてはいけない」と自分を見張ってしまいます。

母親の価値基準で、自分や他人を責めるのはやめましょう。基準はあくまで自分の本音です。「正しいか、間違っているか」ではなく「好きか嫌いか」「心地よいか」「心と体がゆるむか」が自分の基準なのです。

思考実験をしてみましょう。「どんな状況でも、どんな選択をしても、世界じゅうの人が絶対に自分の味方をしてくれる。なにかをしても、なにもしなくても、絶対に皆が応援してくれるとしたら、私は一体どうしたいだろうか？」と考えてみてください。そして好きな方、心地よい方、心がゆるむ方を選びましょう。これが母親基準ではなく、自分基準を取り戻す練習になります。

お母さんの笑顔が、家族の幸せです。自分の本音を大切にして、「あー毎日幸せ！」を目指しましょう。お母さんが幸せになれば、子どもは安心して自分のことに集中でき、勝手に幸せになることができるのです。