ナチュラル＆メディカル創業50年目の追求綺羅化粧品株式会社　代表取締役社長　田中直樹氏

化粧品の成分が肌トラブルを引き起す。なんの成分が含まれているかわからない。そんな化粧品が珍しくなかった時代に、天然成分、無香料、全成分表示など、ナチュラルな化粧品の先駆けとなったのが、綺羅化粧品です。2020年に創業50周年を迎えるにあたり、製品開発にかける想いを、代表取締役社長田中直樹氏に伺いました。

創業時から「ナチュラル」を重視してきたなかで、「メディカル」についていかにバランスを取るのか、難しい部分もあります。しかし、安全性をきちんと担保したうえで、機能性の高い製品開発を進めていきたいと思います、と田中社長。

綺羅化粧品の始まりは、創業者である会長の山本勝之が「スクワラン」という深海ザメの肝臓エキスに出会ったことです。スクワランは人の皮脂にも含まれ、人の皮膚に浸透しやすく親和性の高い天然の成分です。その特徴を活かした、スクワラン100％の美容液が最初の商品です。実は、天然成分100％の化粧品というのはこの製品が日本初です。化粧品の定義は厚生労働省（当時は「厚生省」）によって定められていますが、それまで、化粧品というのは水と油と添加物を混ぜ合わせたもので、単体の成分の化粧品はありませんでした。弊社は新たに許可を取って、天然成分にこだわった化粧品の開発を進めていきます。

1970年代に「化粧品公害」という問題がありました。化粧品に含まれる成分が原因で、「女子顔面黒皮症」と呼ばれる色素沈着が起きるトラブルが多発したのです。そういった時代背景もあり、弊社は、天然由来の原料を使い、肌に優しく安全で、なおかつ肌をきれいにしてくれる製品開発を目指しました。そのなかでいち早く取り組んだのが、香料を除くことです。私が綺羅化粧品に入社したのが37年前なのですが、そのころ、フレグランス製品を除く基礎化粧品はすべて無香料になりました。今でこそ天然成分や無香料の化粧品は珍しくありませんが、弊社の製品はその先駆けだと思います。同時期に、全成分表示もおこないました。現在、化粧品は全成分表示が義務付けられていますが、当時は指定成分のみの表示が一般的でした。全成分表示にあたっては、販売員さん向けの勉強会を開き、成分の目的などもすべてオープンにしました。

創業から天然成分にこだわって製品開発を進めていた弊社ですが、天然成分でもアレルギーなどのトラブルを起こすものはありますし、逆に化学的に作られた成分でも肌に良い効果をもたらすものもあります。安全性をどう担保するか考えた結果、全製品にアレルギーテストを義務づけ、製品化するために満たすべき社内基準を定めることになりました。化粧品の全製品アレルギーテストというのも、弊社が日本初ではないかと思います。そして、できる限り天然由来の成分を使いながらも、安全性が確かめられ、かつ機能性の高いものであれば、化学的な手法で作られた成分も活用するようになりました。それまでは「ナチュラル」のみを重視していたのが、「ナチュラル＆メディカル」というコンセプトで、安全性と機能性の両方を重視するようになったのです。たとえば、肌に優しいパウダーメイクができると人気の「プレミアムパウダー」。石油系ではなくスクワランを油成分として、特殊な加工で肌への刺激を抑えた安全性の高い製品です。また、多孔質のパウダー構造により肌にきれいになじみながら撥水・撥油にすぐれ、ティッシュオフで簡単に汗や脂が取れる、機能性の高い製品でもあります。

昭和63年、千葉県に設立された綺羅化粧品の工場

弊社は昭和63年、千葉県に工場と研究施設、配送センターを開設しました。自社工場は、製品の安全性と鮮度の担保という点で重要です。製品の鮮度を保つために、弊社では小ロットで回数を多くして生産をおこなっています。また、化粧品が空気に触れて劣化するのを防ぐために容器の改良もおこない、製品が空気に触れない構造の抗酸化容器の活用を進めています。

こういったこだわりを持ち続けることができたのは、創業から49年間培ってきたお客さまとの信頼関係があるからです。創業当時、お客さまの多くが、肌トラブルで普通の化粧品が使えなくなり、綺羅化粧品にたどりついた方でした。そういった方々と、弊社製品と他社製品はどの成分が違うのか、あるいは弊社製品と他社製品に共通している成分は何なのか、すべてオープンにしながら製品を作り上げてきました。

こだわりがある分、手かせ足かせもあります。たとえば、弊社の日やけ止め製品は紫外線吸収剤を使っていません。吸収剤を使えば塗っても白くならない、使い勝手の良い製品が簡単に作れます。しかし弊社としては、すべてをオープンにしたうえで、製品を理解していただけるお客さまに使っていただきたいと考えています。実際、そういうお客さまは、綺羅化粧品だったら安心だと、長くご愛用くださっています。時代の変化に対応しながらも、創業から続くこだわりを大切に、今後も製品開発を続けていきたいと思います。