着るだけで疲労回復するパジャマ。まるでS‌F映画の世界の話のようですが、リカバリーウェアとして人気の「リフランス」は、まさに未来の衣料を現実化したような機能性パジャマです。それを製造販売するH‌Lコーポレーション代表の石黒崇氏に開発のきっかけについてお話を伺いました。

「私のポリシーは実行と行動。一流のプランで行動しないより、三流のプランでも動けばなんらかの変化が生まれる。面白そうな人がいればすぐに会いに行き、話を聞いて行動する。一生懸命熱意を持って行動していると、ひょんな出会いがあるんです」と語る石黒氏

2013年に親会社である小島衣料の代表に就任し、まずは既存事業の安定拡大に注力していました。約３年である程度事業が安定してきたので、次なる事業を考えていたころ、ある展示会で人だかりができているブースを見つけました。行ってみると、生地を手にかけると血流に変化があるというので、私も体験しました。右手にその布をかけ、マイクロスコープで左手の血流を調べると、あっという間に血流が変わったんです。プラウシオン加工した生地を販売している株式会社プラウシオンテックスとの出合いでした。その場で、枕カバーを購入して帰りました。実は、代表に就任してから、あまり眠れていなかったのです。23時に寝ても必ず２時には目が覚め、そこから１時間ごとに目が覚めてしまう。朝５時半に起きますが、眠いまま。職業病だから仕方ないとあきらめていたんです。プラウシオン加工は睡眠にも影響があると聞いたので、当時は新規事業のためではなく、自分の課題解決のために買って帰りました。ところが、その枕カバーを使って寝ても変化を感じなかったんです。そこで触れる面積が多くなるよう、枕カバーを抱き枕に被せてみましたがやはり変化がない。血流が変わったことを目の当たりにしたので、なにか効果はあるはずだと思っていました。そこで、プラウシオンテックスの東京営業所に行き、生地を売っていただけるようお願いしました。それを会社に持ち帰り、なにを作るか社内で検討した結果、パジャマを作ることになりました。すると、そのパジャマを着て寝た日から、ものすごく眠れるようになったのです。おかげで疲れが取れ、体もすごく楽になりました。これはビジネスになると、早速、プラウシオンテックスを再訪し、独占でパジャマを作る契約をしました。２０１７年のことです。

プラウシオン加工した糸はリラックスできるとのデータもあったので、仕事用ではなくオフ用の商品がいいと考えました。血流が良くなったり、体の可動域が広くなったりすることはデータとして出ていました。要は疲労回復しているということ。当時、睡眠負債という言葉は浸透していませんでしたが、私自身が眠れていなかったので、寝るときに使うものにしようということになり、触れる面積が広いほうが体に影響が大きいのではないか、それなら体を全部包んでしまえと考えた結果、パジャマにしたのです。新規事業成功への一番の近道は、本業と親和性があること、なおかつ、同一市場、もしくは同一技術があることなど。たまたま見つけたものが本業と親和性があって、同一技術ということから、新規事業としてスタートしました。

新規事業を始めるときにはＥＣサイトで販売すると決めていました。弊社はそれまでオリジナル商品がなく、ＥＣサイトでオリジナル商品を売りたいとおぼろげながら考えていたのです。プラウシオンに出合ってスタートさせることができました。

ところがセールスを始めてみると、値段が高いとか、こんな薬機法に抵触しそうな商品はやりたくないなどと言われました。そこで、緑茶などに認定されている「特定保健用食品」のような表示ができないかと探し始めました。「一般医療機器」というものがあることがわかり、一般医療機器の申請が得意な行政書士の方に申請していただき認められたのです。それにより、血流改善等の効果効能を謳うことができるようになりました。一般的にはデータ取得などに時間とお金がかかりますが、プラウシオンの開発者がデータをとって学会発表をしていたこともあり、それを使うことができたので、とても助かりました。２０１８年１月に販売を始め、６月に一般医療機器の申請をしました。「着る一般医療機器」は世の中で初めてでした。リカバリーウェア（着るだけで健康回復することを目的とした服）を製造販売する他社も、このビジネスモデルを参考に、着る一般医療機器は増えました。

リカバリーウェアの認知度が上がることは、良いことだと思います。現在の認知度は、10人に一人いるかいないか。世の中に広がるには「特別なものを着ている」という体感が必要です。体感が少ない商品は広がりにくいと思うので、まず自分が体感できるものをという想いで作っています。体感さえあれば、値段には関係なく売れていくだろうと思います。鉱物を使った商品は他社にもありますが、使用量が違います。鉱物をナノレベルで練り込んだ糸を縦糸だけしか使っていなかったり、全体の半分以下しか入っていなかったりします。弊社の商品は全体に使っています。鉱物の使用量が全然違うのです。布を手に乗せるだけで血流が改善するのであれば、もっと少ない量でも良いのではないかと思うのですが、たくさん使っているほうが体感としてわかりやすいと思います。

お客様の声として、全体の約８割が体になんらかの良い影響があったと伝えてくれています。睡眠導入剤を使っていたけれどリフランスを着てから飲まずに済んでいますという声や、長年悩んでいた冷えがなくなりましたという声もありました。一日も早くリフランスの知名度を上げて、お客様に知ってもらい、使ってもらいたいです。健康寿命が延びると、医療費を減らすことにも繋がります。健康で長生きする人が増える世の中になっていくんじゃないかと思っています。