最近、自然派の生協の宅配を頼み始めました。豚肉や玉子に「GM飼料不使用」などと書いてあります。
遺伝子組み換えのことだそうですが、そういえば遺伝子組み換えって、なにがどうダメなのでしょうか?
(長岡京市 それでも肉が食べたい3人の息子の母)
A.安全性については未知数。農薬が多い可能性も
答える人 岸江 治次
「遺伝子組み換え」は、英語で“Genetically Modified”略してGMともいわれています。交配して、同じ(または似た)種を掛け合わせるのが自然のなりゆきです。遺伝子組換えの技術では、生物、植物といった種の垣根を超えて、遺伝子が組換えられることもあります。例えば、Aという植物があったとして、別のBの生物が持つ遺伝子を付け替えて、まったく別の命を作る。植物や生物を人間にとって都合のいいものに変えていくということです。
人間が人工的に作ってしまったものとして、食品添加物がありますが、安全だと言われて使い続けてきた結果、実は発ガン性があったと、後にわかったものが多くあります。例えば、AF2という豆腐に使われる防腐剤。1960年代に始まって、1974年には発ガン性があるということで使用禁止になりました。こういう事例が随所にあります。人間が勝手に安全だと決めたものは、後になって「それは間違いだった」ということがたくさんあるのです。
言葉だけを聞いて「遺伝子組み換え」を怖いという人もいらっしゃいますが、自然界には、もともと遺伝子組み換えはおこり得るもの。そのものが悪いわけではありません。地球が誕生して生命が進化する長い歴史のなかで遺伝子に変化は起こってきました。私たちが食べているお米も、食物連鎖を繰り返すなかで今の形に変わってきたのです。遺伝子組み換えが問題なのは、安全性についての検証がほとんどなされないまま、経済が潤うというだけで、短期間の間に世界中に広がっているから。私たち消費者は「流通している」ということに対して、もう少し疑問を持つべきでしょう。
遺伝子組み換えをおこなう理由は、将来訪れるであろう食糧危機に備えるため。農産物の収穫の効率を上げるためにどうすればいいか。例えば、雑草が生えているとエネルギーを取られて作物は育ちにくい。そこで除草剤を撒いても枯れることのない作物を作ればいいのではないかと除草剤耐性のものを。虫が果実を食べてしまうので殺虫剤を撒いても痛まない殺虫剤耐性のものを……と遺伝子組み換えがおこなわれてきたのです。除草剤は「枯れ葉剤」由来。遺伝子組み換えによって農薬に耐えうるからと、除草剤や殺虫剤などの農薬をたくさん浴びている可能性があることも問題です。
では、実際にどういう種類の遺伝子組み換え作物が増えているのでしょうか。実験自体は種の壁を超えていますが、流通しているのは8種類。大豆、とうもろこし、じゃがいも、なたね、てんさい、パパイヤ、アルファルファ、綿実などです。
遺伝子組み換え作物を直接口にする機会は少ないものですが、知らない間に間接的に食べてしまっているかもしれません。特に、肉を口にする方は要注意。家畜の餌にされていることが多いのです。また惣菜や調味料など、加工食品として形が変わってしまっていて気づけないものもあります。
表示についての日本の現状についても着目すべきです。遺伝子組み換え食品を使っていれば明記しなければならなりませんが、「遺伝子組換えでないもの」を使っている場合は、任意表示です。現状、大豆は99%は輸入で、そのうち8割が遺伝子組み換えです。しかし、実際に遺伝子組み換え表示を目にすることはあまりありません。遺伝子組換えと、そうでないものを分別している場合、5%未満であれば混じっていたとしても「分別している」と明記しても構わないという現実があるのです。
日本国内では遺伝子組み換え作物を商業的に栽培してはいけないということになっていますが、遺伝子組み換えの稲の研究はすでに始まっています。遺伝子組み換え、放射能など、自然の摂理の根幹に触れることに、われわれの人間の生理機能は実は追いついていないはずです。そういったことまで慎重に考えたうえで、日常の食品を選んだほうがいいでしょう。