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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

【Vol.59】「先送り」と「時間軸」

投稿日:

「やっかいなことは、とりあえず先送りしておきたい。そのうち何とかしよう。」という気持ちは私にも、そして大半の人にもあることです。多忙で他にもやらなければならないことがあれば、なおさらのことでしょう。恥ずかしながら、私も毎月締め切りがやってくる本稿を書き起こすためにパソコンに向かうまでには、何度も決意が必要なことも告白します。とはいえ、これが人類にとって最悪レベルの人災事故に関係することとなると、まったく話は違います。ましてや、未来そのものである子どもたちに多大なツケを残すことになるのなら。

いつか、誰かが
昨年の原発事故後、何度も福島に入りつつ原発事故の引き起こした「見えない恐怖と悲しみ」を見、聞き、感じるなかでわかったことは、紐付きのお金がもたらす終わりのない分断の構図でした。もちろん、エネルギーであれ兵器であれ、核を利用しようということの直接的な危険性はいうまでもありませんが、その周辺には姿形を変えた無数の痛みと悲しみが転がっているのです。ましてや、砂の城ごとくボロボロの4号機に横たわる大量の核燃料棒は地球を人の住めない場所にできるほどの危険性を抱えながら、何ら解決されていません。事故の当事者は僕たちはベストを尽くしたし、何の責任もないよと公言しているのです。にも関わらず『原発事故の危機はすでに去った。安全に運転することができることも確認した。』 『だから、エネルギーの安定供給と経済成長のためには、とにかく原子炉を期間限定でもいいから動かさないといけない。』 という論理と、『子どもたちにツケを回さないために消費税率を上げないと財政が維持できない。でも、社会保障は税収増えた分以上に充実させます。』という論理が平行して繰り出され、いったいどのような時間軸で誰のために考え出した方針なのかということが私には理解できません。原発は動かせば動かすほど行き場のない使用済み核燃料を生み出し、それは何百年、何千年、何万年にもわたって世代間の先送りと負担を要求するものです。いつか夢のような技術がすべての問題を解決してくれるという究極的な楽観論に立つとしても、それまではどれだけのリスクでも許容できるわけではありません。覚悟を決めて税率を高めたとしても、無秩序な支出という出血を止めない限り、終わりは必ずきます。とりあえず原発を動かせばいつか夢のような経済成長がやってきて、多大な納税をもたらすだろうと信じたポーズをしてみます。『いつか、誰かがやってくれるだろう。本当に難しい問題に限っては。』 というのは誰か固有の人に限った思想ではなく、私たちの多くに根付いてしまった享楽思想なのかもしれません。

だからこそ、今、ここから
不思議なことがあります。たとえば、時間軸は短めに、個人的生活の安定というという視点で原発の再稼働と税負担について考えてみましょう。「一年後の個人的生活の豊かさ」という視点に絞り込んで考えると、「電気が止まるのも仕事がなくなるもの困るし、代替エネルギーの技術進化には時間がかかるから原発はとりあえず動かしましょう。私たち庶民には税負担は少なければ少ないほど助かるわ。」 ということにでもなるのでしょうか。逆にできるだけ時間軸を長く、視野を広くしていきましょう。たとえば、100年先の人類の未来を想像したとします。100年といえば、三世代くらい先です。あなたが日本の首相という視点でこの時間軸を思考し、そして人類を代表するのです。100年後を悲観的に空想するのと楽観的に空想するのでは答えは大きく違っているのかもしれませんが、どちらにしても「今すぐ、何とかしないと」という気持ちにならないでしょうか。少なくともずっと先を空想していくと、現状がとても悲しく見えてくるものですし、それを何とかしたいと思うのです。その結論は、突き詰めていくと「今、ここから○○しよう」という気持ちになります。100年で足りないのなら、300年先ならどうでしょうか。日本の首相というイメージがみすぼらしいのなら、地球を見下ろす何らかの存在という空想でも構いません。ずっと先にはあなたは生きておらず、あなたやあなたが愛した人の子孫が生きています。ぐっと未来を、思いっきり広い世界観で今起きている問題を見つめると、なぜか今すぐ何かをしたくなります。なぜでしょう? 私たちはそういうすばらしい能力をもってこの世に生まれてきました。自分が血汗をかくような必死の努力で政治家になったとしたら、その立場はどうしても守りたくなります。立場を守るという視点は長くて数年でしょう。政治家になった動機が100年先の未来の幸せのためだとしても、何か個人的なことを守るということは一気に視野を狭めるのです。今やるべきことは打算や問題の先送りになるという、皮肉な結果に陥るのです。

100年先の未来のために
私個人的な気持ちでは、今回の再稼働はあまりに打算的で、先送り思考の典型的な例だと考えていますが、とはいえ怒りにまかせることが経営者としての自分の勤めだとは思っていません。私たちには聡明なお客様、献身的なスタッフ、努力を惜しまない取引先があり、自分のことよりも人のことを考える仲間もいます。反核平和運動に明け暮れた若い頃を経て、社会の変容は個人の変容の先にしかないと考えたときから、この事業と関わる人たちを引き寄せました。私が次におこなうことは原発や利権、有害化学物質とできる限り関係のない仕事を作り出すことと、紐付きのお金を期待しない生き方を広げることです。努力なく得られるお金には何らかの秘められた意味合いがあり、それらは早く浄化しなければなりません。100年先の未来にも必要とされる事業に投資し、利権と関係するお金の流れとは断絶することを必要としています。理想とは裏腹に微力すぎる現状に悲しくなるときもありますが、だからといってやめるつもりもないのです。

※本稿は7月7日時点のもので、事態の進展は早く、大きく状況が変わっているかもしれませんこと、お詫び申し上げます。

- 中川信男の多事争論 - 2012年8月発刊 Vol.59

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