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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

道を楽しむ

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年末から年始はサッカーやラグビー、駅伝といくつものスポーツで頂点が決まりました。たゆまない努力を続けてきて、その舞台に立つだけでも素晴らしい。そこで順位がつけられることに切ない気もします。

順位という意味では、2位と4位はあまり好まれず、避けるべきと考えられます。2位も十分に立派なのですが、やはり1位とは注目度がまったく違うのです。

もし日本で一番高い山はと尋ねられれば、富士山で標高は3776mと誰もが答えます。では二番目はと尋ねられて、南アルプスの北岳で3193mと即答できる人は少ないでしょう。1位と2位の差とはこういうもので、1位なら名前も記録も覚えられるものが2位以下だと紛れてしまうのです。

4位にはメダルがありません。金・銀・銅と、1位と2位、3位の差はメダルの色の違いですが、3位と4位のメダルのあるなしの違いは大きい。準優勝チームの選手が「負けたら2位も最下位でも同じ」と泣き崩れるシーンがありますが、やはりメダルのない4位、あるいは表彰状のない入賞圏外では寂しいのではないでしょうか。

数字の罠

2と4とは、私たちの生活でも気をつけたい数字です。年始からなにかを始めた人もおられるでしょう。1ヶ月が経って、そろそろ小休止という人もおられるかもしれません。

たとえば朝早く起きてウォーキングをすると決めたとします。初日は意気込んでできたのに、二日目にはしんどくなることがあります。それは初日にがんばり過ぎて二日目に疲労を残してしまうから。これが2の罠です。二日目にがんばれないのは弱いのではなく、一日目のがんばりが強すぎたのかもしれません。なにごとも初めは力が入りますが、あえて力を抜く。これでいいの?というくらい軽めで終わらせるほうが、二日目に続けやすいのです。

二日目の歩みは、三日目も踏み出せます。調子が良いからと少し欲が出てくると、四日目に休みたくなる。初日のがんばり同様、ここもがんばりすぎずにまずは続けることを意識してみる。四日目の休みがそのまま続けば、三日坊主。これが4の罠。もしも四日目で休んでも五日目に再開できれば三日坊主ではありません。自分の意志とは関係なく数字の罠にはまりそうになったと考えて、がんばり過ぎた自分、欲を出した自分を振り返ってまた続ければ良いのです。

ここまで続くと、雨降りだからとか、風邪気味だからとか、前日の飲酒が残っているからとか、ほかの罠にも気づいてきます。自分でどうにかできるものとできないものの違いも出てくるでしょう。それでも何日、何週間と続ければ、それが当たり前になってきて、やらないほうがむしろ違和感になってくるものです。

ときどき、始めるときに道具を新調したくなるのを「カタチから入るタイプ」と笑う人がいますが、カタチから入ろうが始めることには変わりはありません。始めなければ変わりません。始めてみれば変わります。始めたからこそ休んでも再開できるのです。

わが道を行く

禅の言葉に「吾道一以貫之」とあります。吾が道、ただ一つのことに打ち込めばいいというのではありません。目の前で起こることの一つひとつを誠心誠意、大切に生きる。それが「一」を貫くということ。自分の前に現れる道を、誠心誠意の一つの心で貫いて、大切に進んでいくのです。

教え・気づき・悟り、それぞれ別々ではなくつながっているものです。進む先で止まっても、また歩めばいい。道を楽しむと書いて「道楽」。どうせなら、楽しく進んでいきたいものですね。

- 鍼療室からの伝言 - 2024年2月発刊 Vol.197

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