オディの農業日記

【Vol.40】オディの農業日記 第33回

【絶望が希望に変わるとき】

 皆さん、こんにちは。

 今月号でらくなちゅらる通信の形態が変わるということで一応今回がオディの農業日記の最終回ということになります。長い間お読みいただいてありがとうございました。

 私が農業を始めたのが2006年。今年で5年が経ちましたが、その間、農作物の価格低下、異常気象、獣害等々、農業を取り巻く環境はどんどん厳しくなっています。

 特に今年は夏の暑さでお米の収穫量が減り、品質は白濁化現象で低下し、米価も大きく下がりました。私が農業をしている地域でも多くの米作農家は赤字となり、「先行きが見えない上に、獣害もひどいので、農業を辞めようと思っている」という声があちらこちらで聞かれます。

 将来的にも日本政府が進めている自由貿易圏構想が実現し、お米の輸入の自由化がなされると私が住む三重県ではお米の生産量は98%の激減(2%しか残らない)という試算が出ているそうです。その対策として政府が打ち出している農家の個別所得保障も大型機械や化学肥料・農薬を使った大規模農家のみが対象で、所得保障も生産原価を下回った場合の保障となるので、農業収入は激減します。そうなると農業人口の減少・高齢化は一段と進むと思います。

 このように日本の農業を取り巻く状況は絶望的ともいえます。でもだからこそ私は希望を感じています。

 もし、自由貿易圏構想が実現し、海外から安い農作物が流入して日本の農業が崩壊という事態になると、食糧の自給率は激減、農地が荒地になり、中山間地の集落は崩壊、失業率の急上昇等の大きな社会問題が発生するでしょう。でもそうなって初めて、日本の農業の行く末を本気で考える人たちが出てくると思います。これまでは政府、農民、消費者、流通業者などすべての利害関係者が自分の利益や権利を主張するあまり、全体として整合性の取れなかった日本の農業のあり方をゼロから作り直せるチャンスになると思います。

 丁度、幕末に古い社会が崩れ、一気に新しい社会に変わったように、終戦後、灰燼の中から奇跡の復興を成し遂げたように……
日本人にはそんな底力があります。そしてその力を発揮することこそ、生物としての人間の生きる活力になるはずです。

 古武術を通じて身体の使い方を研究されている甲野善紀さんは、安心・安全を追求しすぎた結果、人間(特に日本人)は本来持っている能力や生きる活力を失ってきているといっています。逆にいえば、厳しい時代こそ、自分の能力・活力を思いっきり発揮できるのかもしれません。

  これから農業はもっと厳しい時代を迎えるかもしれませんが、私はもっともっと自分の中に潜んでいる能力を掘り起こして、楽しみながらお米作りに励んでいきたいと思っています。

 またお目にかかれる日を楽しみにしています。

※今年、プレマさんでオディ米を扱っていただけるようになりました。ほとんど機械を使わず、たくさんの人に手伝っていただいて大切に作ったお米です。もちろん、有機肥料のみを使い、農薬や除草剤は一切使っていません。稲刈り後は、はざにかけてじっくりと天日で乾燥させた昔ながらのやり方で作ったお米です。たくさんの方から本当に美味しいと高い評価をいただいております。是非お試しください。

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【Vol.39】オディの農業日記 第32回

【不思議な感動】

 今年の稲刈りは雨が多くスケジュールが遅れ気味でしたが、何とか一段落して、ほっとしています。今年もたくさんの方と一緒に稲刈りをしましたが、その中でも特に思い出に残る稲刈りがあります。

 10月初めに6名の知的障害を持った方々の稲刈り体験を受け入れたときのことです。障害を持った方たちを受け入れるのは初めてで、最初は、鎌で手を切ったりしないかな、きちんと刈ってくれるのかな、刈り取った稲をぬかるんだ田んぼに置いてお米に泥が付いたりしないかな、と心配ばかりしていました。でも最初に稲刈りの手順を実演して、説明すると、皆さんきちんと理解して説明どおりに丁寧に仕事をしてくれました。もちろん、健常者と比べるとペースはゆっくりですが、みんなで声を掛け合いながら、時には笑い声が秋の空に響き、稲刈りは順調に進みました。

 お昼に作業終了。その後、みんなでおにぎりとお味噌汁を田んぼの脇で食べました。みんなが美味しそうにおにぎりをほおばる姿を見ていると、心の底から何か分からない感情が湧き出してきて、涙がこぼれてきました。

 特に何かを話したり、感動的なことがあったりした訳ではないので、なぜ涙が出てきたのか分からず、とまどいました。もちろん、周りの人たちにも涙を見せないようにしました。

 みんなが帰った後、さっきの感情はなんだったのかとじっくりと考えてみました。もしかしたら自分が本当にやりたいこと、実現したい社会の一部が見えたことで涙が出てきたのかもしれないと思いました。

 障害者も健常者も一緒になって一つの作業をして、一緒にご飯を食べる。今、私は農業をしてお米を販売して生活させていただいていますが、本当はお金のやり取りではなく、いろんな人が集い、一緒に汗を流して仕事をして、一緒に食事をする。それぞれが自分のできることで人の役に立ってみんなで仲良く生きていける社会をつくりたいんだなと感じました。

 今、私が大きな影響を受けている人が2人います。

 生き方のこつを伝えている小林正観さん、麻雀の世界で20年間無敗を誇り、今、麻雀を通じて生き方を教えている桜井章一さん、ともに障害を持ったお子さんをお持ちです。そしてお二人とも障害を持って生まれた我が子に「私のところに生まれて来てよかったね。生まれてきてくれてありがとう。何があってもお前を大切にするからな」といっておられるそうです。

 人間として本当の強さ、あたたかさを持っている人たち。その人たちが感じておられることをほんの少しだけですが感じることができた素晴らしい一日でした。

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【Vol.38】オディの農業日記 第31回

【イノシシにやられました】

 皆さん

 今年の夏の猛暑で体調など崩されませんでしたでしょうか?

 お米作りも天候不順でかなり苦しめられましたが、最終的には何とか平年並みの収穫までこぎつけました。しかし、プレマさんで毎年販売していただいている黒米がイノシシに食べられて全滅してしまいました。オディの黒米をご購入いただいている皆さん、本当に申し訳ございません。

 実は去年までも多少の被害はありましたが、進入路を見つけてネットを張れば十分防除できたのが、今年は何度対策をしても破られてしまいました。山に食べ物が少なくなっているのでしょうか?

 今回、イノシシの被害を受けて、日本の農業、特に山間部での農業が危機的状況にあることを実感しました。また今年の夏、岡山、栃木、茨城県に行って農家の人と話す機会があったのですが、すべての地域で過疎高齢化が進み、採算の悪化と、働き手の高齢化、獣害などで農業や林業が衰退していることを見聞きしました。私が農業を営む名張市赤目エリア(大阪まで電車で1時間程度)でも農家の高齢化は進む一方。特に、作業がしにくく、イノシシ、鹿、サルなどの獣害もある山間地の農地はどんどん放棄されています。

 農水省の発表によると日本の農・林業が果たしている多面的価値を金銭評価するとなんと年間78兆5千億円にも上るそうです。実際の農業生産額8兆5千億円、林業生産額4千億円の10倍近い価値を生み出している計算になります。
農林業が果たしている主な機能は土壌浸食・表面侵食防止、水質浄化、水資源の保持、洪水防止・緩和などですが、その機能の大きな部分を山間部の農地や森林が果たしています。しかしその山間部の農・林業の疲弊は激しく、あと10年も経つとかなりの部分が放棄されるのではないかと思います。

 これまで何百年もかけて作り上げた農地や山林は、一度失ったら復活させるために途方もない時間とお金がかかります。とはいえ私も獣害を受けながら山間地でのお米作りを続ける自信はありません。

 今、日本全体で本気で、中山間地の農業・林業、そしてそれを支えるコミュニティを守っていかないと、このままでは美しい日本の国土はとんでもないことになるかもしれません。自然と調和して生きる知恵と心を持った日本人とその風土をはぐくんだ国土、何とか守っていきたいと思います。

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