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オディの農業日記

羽鹿 秀仁 (はじかひでひと)

サラリーマン、経営コンサルタント、青年海外協力隊の隊員として中米のニカラグア、パナマで5年間活動後、ネットワーク『地球村』というNPO団体のスタッフとしてアフガニスタン支援に3年関わり、2006年から三重県名張市赤目で農薬を使わない農業を始める。

【Vol.31】オディの農業日記 第24回

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【順送り】
 農業や林業をやっている人たちの間で使われる言葉に、“順送り”という言葉があります。

 例えば、林業では今、伐採できる木は80~90年前に植えられた木で、その頃のご先祖様の仕事ぶりが今の売上に響いてきます。そして今の仕事ぶりが、自分の孫やひ孫の世代に影響していきます。農業はもう少しスパンは短いですが、いい土を作ることで世代をおっていい作物が作れるようになります。また山を切り開いて棚田を作るのは10年、20年の時間がかかります。そんなご先祖様のおかげで私たち日本人は豊かな国土で生活できていると思います。

 数年前に松阪で500年近く林業を営んでいるHさんのお宅にお邪魔して、山林を見せてもらったことがあります。Hさんの親戚の方と一緒に訪問させていただいたので、大正時代に作られた立派な離れに泊めていただき、夜を徹していろいろな話を聞かせてもらうことができました。

 Hさんの所は4代前のおじいさんが頑張って立派な森を作りましたが、その次の代が遊び好きの方で森にあまり手を入れなかったので、今、Hさんは山を維持するのにとても苦労されているそうです。でも歯を食いしばって先祖伝来の山を守って、子どもたちに伝えて行こうと頑張っておられます。またお金になる針葉樹だけを植えるのではなく、次世代への贈り物としてひとつの山を広葉樹やたくさんの種類の木の複合林に戻そうと努力されています。本当の意味で“順送り”を実践されています。

 その正反対に見えるのが今の日本のあり方。国債発行残高はどんどん増えていき、年金や回収の見込みの立たない財政投融資を加えていくと、国や地方自治体の公的借金が1000兆円を超えると聞きます。そして今年度も政府の支出や赤字国債発行額は過去最高。子どもたちに豊かな生活を“順送り”で残すのではなく、借金を残して問題の“先送り”をしています。

 これは政治だけの問題ではなく、「今さえ良ければいい」「自分さえ良ければいい」「楽しければそれでいい」そんな気持ちの人々が増えているからではないでしょうか?今こそ、本来日本人が持っている子どもたちへ、未来へつないでいく“順送り”の気持ちが必要とされているのではないでしょうか?

 まずは自分から、できることから“順送り”をして行きたいと思っています。

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- オディの農業日記 - 2010年3月発刊 Vol.31

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