厚生労働省が定めた1日あたりのカルシウム所要量は、乳児期が500mg、1歳~9歳迄が500mg、10歳~18歳迄が男性900mg、女性700mg、19歳からの成人は600mg、妊娠期は成人期の600mg+300mg、授乳期は成人の600mg+500mgを摂取する必要があると発表しています。ところが国民栄養調査によると、この調査が始まって依頼、カルシウムの摂取量が600mgを上回ったことはただの一度もないのです。以前にカルシウムは骨や歯を丈夫にするだけの栄養素ではないと言いましたように、精神的な安定、運動機能、ホルモン分泌の調整、免疫力を高める、骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化、糖尿病、老人性痴保症はもとより、肌の老化にまで関わり、我々人間が末長い健康を維持していく上に於いてはとても重要な栄養素なのです。日本人の食生活は、今や飽食かつ栄養過多の時代であっても私たちは慢性的なカルシウム不足に陥っているのです。このことは、カルシウムがいかに摂りにくい栄養素であるかを示しています。
【食物からのカルシウムの吸収について】
食物中に含まれるカルシウムのすべてが体に吸収されるのかというと、そうではありません。毎日の食事で所要量の600mgをきちんと摂取したとしても、食物によって多くとも50%、少ない方では約10%の量しか吸収されません。さらに、カルシウムは尿や便中に150mg~350mgくらい排泄されますから、体の中に残すとなると、計算上では成人は、日々、700mg程度を目標に摂取しなければならないことになります。成長の盛んな子供、胎児にカルシウムを供給する妊婦、吸収力が低下する老人などは、さらに多くのカルシウムを摂取する必要がありますが、幼児から老人までが生涯サプリメントで補うには大変困難だと思われます。できれば日々の料理にカルシウムが強化でき、家族全員が知らない間に補給できていることになれば理想的だと思います。
山口清道
山口清道氏 日本予防医学研究会理事、フルボ酸・腐食性物質機能研究会会長。大手企業や新聞社、薬剤師会、教育委員会その他の各団体が主催する講演会で講師を務め、『食品破壊の実態』『カルシウム不足の脅威』などをテーマとする講演回数は1000回を越える。 現在は講演活動を休止し、食品科学研究所・BAOBAB代表、株式会社バオバブ代表取締役として、イメージ商品が氾濫する現代における、ほんもの食品の研究開発に取り組む。 |