ラオスは仏教の国です。首都ビエンチャンや古都ルアンパバーンには町の中にいくつもの寺院がひしめき合い、町の中や、各種施設でオレンジ色の袈裟を着た僧侶を見かけるのは日常です。そんなラオスで、だいたい7月頃に仏教において大切な期間に入ります。それが僧侶の修行期間である安居で、安居に入ることをラオス語で「カオパンサー」といいます。安居は毎年だいたい7月から9月くらいのおよそ3ヶ月間です。
僧侶の毎日を簡単にご紹介します。毎朝4時に起きて仏像を前に読経をあげ、その後、十数人で列をなし、寺院の周辺の道を歩いて托鉢をします。道ばたには人々がござなどを敷いて跪いて待っており、僧侶は人々から、お金やもち米、料理などの供物を受け取り、鉄鉢のなかに入れます。受け取ると、供物を提供してくれた人、その家族の平和を願いお経を上げて去っていきます。だいたい7時頃には寺へ帰り、朝食をとります。食事は人々が捧げてくれた供物から朝と昼に分けていただきます。僧侶には夕食はなく、昼12時以降は飲み物以外口にしてはいけません。食事のあとは、各自の自由時間で、僧侶大学へ通う者、一般の学校へ通う者など様々です。寺の仕事・行事があれば、もちろんそれが優先されます。近隣の村へ法事に出かけたり、寺院の修復作業などをしたりします。夜7時頃再び読経をあげ、一日が終わります。
安居の期間中、基本的に僧侶は托鉢以外で寺院の外に出ることを禁じられます。これは安居の期間と重なる雨季は、田畑の作物が生育する時期なので、不用意に踏みつけて生育を阻害しないようにという考え方から来ているそうです。
では一般の人々にとっての安居とは何でしょうか。カオパンサーの前になると、各家で男性が仏門に入る前の儀式を行っている風景をよく目にします。ラオスでは、出家は義務ではありませんが、出家することによって親孝行するという意味合いがあるので、外国に住むラオス人がそのために帰国することもあるそうです。特にカオパンサーの前は出家ラッシュで各寺院も忙しいようです。また、安居期間中は、人々は「決まり」を定めてそれを実行しようと努力します。例えば禁煙や禁酒、また誘惑に負けず学業に励むなど「決まり」は人それぞれ。それを家族で披露し合う場合もありますし、自分一人の胸の内で実行する人もいるようです。
カオパンサー当日には寺院で儀式が行われます。袈裟やろうそく、金銭など、寺院での生活に必要なものを、人々が供物として捧げに訪れ、僧侶が読経をあげます。そこには、僧侶に修行に励んでもらいたいという願いが込められています。期間中には他にも行事があり、豊作を願う儀式や、死者を弔う儀式など、仏教と人々の生活が密接に結びついていることを感じさせます。
駒崎 奉子
駒崎 奉子氏 ラオス・ビエンチャン在住3年。大学卒業後、日本での社会人経験を経てラオスへ渡り、日本語教師をつとめる。現在は日本人学校で教える傍ら、ラオス語翻訳や文筆活動も積極的に手がけている。 「こまごめ」は大学時代に名字からつけられたあだ名。 |