「うわぁ、陰いっぱい」
私の予想に反して、朝の表通りには等間隔で並んだ街路樹によって、たくさんの木陰ができていた。車の行き交う音とともに、セミの声と風にざわ・・・ざわ・・・と揺れる木々の音楽が頭上から降り注いでくる。通勤四年目にして初めて、朝の陽射し差し込む表通りを歩く。
今日まで一本北の裏道を行くのが私のお決まりだった。信号がないこと、車が通らず静かなこと、表通りは裏道以上に日陰が少ない(に違いないと思っていた)ことがその理由。
しかし、猛暑続きの日々に、このところ気分が少し滅入っていて、気分転換が必要だと感じていた。それに、― 陰がもしほんの少しでも裏道よりあればラッキー ―という期待にもならない期待を抱いて道を変えてみたのだが、正解だった。日傘をさしていても、この時季のアスファルトからの照り返しはきつく、日傘の下からは、跳ね返った陽射しと地面に蓄えられた熱がダブルパンチで襲いかかってくる。しかも京都の夏は異様に湿度が高く、体力を奪っていく。
夏は信号よりも、静けさよりも、やはり暑さ対策。まさかこんなに表通りが涼やかだったとは。
思い込みとは恐ろしいものだ。道、生きる世界を自ら限定してしまうのだから。すぐ隣に快適な道が走っていたのに、それを探そうともせず、暑さを一生懸命我慢し、仕方がない仕方がないとひとつの道に固執していたこれまでの自分にちょっぴり失笑。
朝はしばらくこの道になりそうだが、思い込みを捨て、縛られず、もっと自由に空を飛ぶように、こっちにもあっちにも行ってみよう。善し悪しはそれから。
宮崎 美里