本紙vol.86(昨年11月号)でお話しした、自分が本当は何をしたいかわからない、という話が途中になったままでしたので、その続きです。
やりたいことがわからない場合、もっとも根本にあるのは、自分の「好き嫌い」が分からなくなっていることです。我が子の子育てをしていて気づいたのですが、子どもが何かしようと動き出した瞬間「あぶない、そこダメ」とか「汚れるからダメ」などついつい言ってしまいます。こういう子育てを続けていると、子どもは親の顔色をみて、やっていいのか悪いのかを判断するようになってきます。うちの子はすでにそういう傾向があります(涙)。これが続くとおそらく大人になっても、心のなかで自分の親の価値判断を基準にして、やっていいのか悪いのかを決める癖が付いてしまうのだろうと思います。もし本来の自分が「これがいい」と思っても、親が気に入らないだろうと想像すると、諦めてしまうのです。進路を決めることも、就職先を決めることも、付き合う人を決めることも、結婚相手を決めることも、心のなかの「親」が気にいるかどうかを基準に決めてしまうことになってしまいます。本当にやりたいことを見つけたいのであれば、自分の心の声に正直になって「どうしても気になるけど(親に反対されるから)選択していないこと」を見つける必要があります。「どうしても気になる」ものが有る時点で、そこに答えがあるのです。ただ心のなかの「親の声」に遠慮して避けて通っているので見つけられなくなってしまうのです。僕自身も今の診療スタイルを選択するときに、両親の批判があるだろうと勝手に想像して長らく躊躇していました。今思えばもっと早く決断しても良かったのにとも思いますが……最終的には「一生の仕事としてどんなに大変でもやりたいこと」を選びました。
ただ、いきなりそこまで踏み込む勇気がないという人が多いこともよく分かります。そういう時には、気になることに関する情報を少しずつでも貯めていってください、とアドバイスしています。自分の経験で言うと、時間があれば本屋に行って、その時気になることが書かれた本や雑誌を探していました。今はインターネット上でたくさん情報を得ることができますし、テレビで気になる情報があればチェックすることから始めても良いと思います。心のなかにその情報が貯まってきたら、なにか行動に移したくなってウズウズする時がきっと来ます。気になる人の講演会に行ってみたり、その道の先輩に話を聞きに行ったり、是非してみてください。自分の目標をすでにクリアしている先達に会うと、羨ましい、自分もやってみたいという思いがさらに強くなります。そしてその思いが最高点に達した時、「親に嫌われても」やってみたいと決断できるようになるはずです。
ここまで気付いていても、我が子に注意しすぎないようにするのは至難の業です……。
山内昌樹
医師 山内昌樹氏 平成19年まで一般小児科医として診療を行うかたわら、統合医療を志しYHC矢山クリニックで小児科を担当。平成22年12月佐賀市内に『統合医療やまのうち小児科・内科』を開院。 医師となってから、重病の患者さんが劇的な回復をすることや子どもの生命力の素晴らしさなどを経験するも、個人差を考慮しない画一的な治療、ステロイド薬や免疫抑制剤の副作用など、西洋医学の限界を感じる。 漢方薬や代替療法と西洋医学を融合して治療を行うYHC矢山クリニックで小児科を担当、病気の真の原因を学び、実際の診療で効果が見られることを経験。 |