健康的な生活の秘訣、それは季節感を大切に自然の中で生かされていることを感じながら、日々の生活をきちんと送ることです。
秋になると、お祭りがあちらこちらで催されます。収穫を祝い、祖先の魂を鎮め、神様に感謝する機会。大きな声を出したり、踊ったり、エネルギーを発散する「非日常」の時。生き生きとしたエネルギーにあふれる非日常があるからこそ、日常の生活をきちんと送れるともいえます。
小豆の効能
お祭りやおめでたい場では、赤飯をいただきます。むかしは、毎月の1日と15日には小豆ご飯を食べる習慣があったとされています。日頃の食生活で不足しがちであったビタミンやタンパク質を補給するためで、疲労が溜まることで体が重くなるのを「厄」とか「邪」とみて、小豆ご飯で追い払っていたようです。「おはぎ」や「ぼたもち」でも、小豆あんを用いますね。食物繊維が多いのでお通じをよくし、心臓や腎臓を強くするとも考えられてきました。
江戸時代に著された医薬書『本朝食鑑』には、小豆の効能として「気分をおだやかにして湿をとり除き、尿の出をよくして、腫れをおさめ、いっさいの熱毒、風邪からくるむくみ、はれものを取り去る」と記されています。
体の浮腫みを解消し、風邪の予防にもなるので、これからの季節には積極的に摂っていきたいものです。
お供え物にみる「陰陽」
祭りごとにはお供え物があります。地域・慣習によっても異なりますが、野菜(土のついた根菜、青果物)、魚(生魚・干物)、菓子(生菓子、水菓子、干菓子)、そしてお酒など。景気や流行で変わるものもあるようです。とはいうものの、どこにでも共通してあるのが、米・水・塩。食養生の陰陽の観点からいえば、米は<中庸>、水は<陰>、塩は<陽>。この基本となる3つにおいての過不足のないことが健康の秘訣となります。摂り過ぎても、また不足しても、良くありません。
何事もバランスが大切ということですね。
「一汁三菜」が基本
日々の献立を一度振り返ってみましょう。日本の食文化の特徴は、「一汁三菜」と呼ばれるものを基本としたなかに栄養バランスが優れていることにあります。先ほどの陰陽のバランスが自然と調うようになっているものです。
お味噌汁の「一汁」で、水分と塩分ともに摂ることができます。おかず「三菜」では、季節の素材の良さである甘み・旨みを塩で引きだし、だし汁で炊き込んでいきます。お米をいただいていても、水分はともに入ってきています。
本来、水分や塩分は別個に摂るものではなく、日常の中で自然と補われていることが理想のはず。ところが、パンに、ハンバーグやカツなど、焼いたものや揚げたものが中心の食生活では含まれる水分が少ないため、そうはいかなくなります。ということは、日常の食事としては考えもの。わざわざ特別に何かを摂らなければいけないということには理由があるのです。
今年の夏も暑い日が続いたこともあり、熱中症対策にと「水分」や「塩分・ミネラル」の補給にと様々な商品を見かけました。夏の前半の時点で熱中症による救急搬送が昨年を上回るペースで増えていたこともあって、「水分を摂りましょう」と聞く回数も多かったことでしょう。あれだけ耳にする機会が多いと不安になり、ペットボトルを持ち歩いていた人も多かったようです。
そんななかで、私の治療では、「冷え」や「浮腫み」を訴える患者さんと接する機会も多くありました。真夏というのに靴下を重ね履きされたり、使い捨てカイロのお世話になったりする人がいらっしゃるのです。原因は、水分の摂り過ぎによるもの。
暑い↓水を飲む↓冷える↓温める↓暑くなる……。特別なことをやり過ぎて、何重にも重なってしまってしまうのです。
本当の答えというのは、特別なものの中には存在しません。日常の中にこそ、ヒントがあるのです。非日常を体験したら、日常にきちんと戻る。日常と、非日常のちがいを意識し、自身で考えられるようになることが大切ですね。
執筆 圭鍼灸院 院長 西下 圭一 病院勤務を経て、プロ・スポーツ選手からガンや難病まで幅広い患者層に、自然治癒力を引き出していく治療を特徴とする。 鍼灸師、マクロビオティック・カウンセラー、リーディング・ファシリテーター。 |