累計122万件出荷!自然食品・自然療法・エコロジー・らくなちゅらる提案サイト

自由教育ありのまま

「日本でいちばん楽しい学校」で新任教師がみた子どもたち

学校法人きのくに子どもの村学園かつやま子どもの村小中学校教員

中川 愛 (なかがわ あい)

かつやま子どもの村小中学校、きのくに国際高等専修学校を経て、立命館大学文学部卒業。高校生時代に東ティモールという国と出会い、残酷な歴史を背負いながらも、笑顔が絶えない東ティモールが大好きになる。「東ティモールのことを少しでも多くの人に伝える」ことを目標に、2019年度4月から、母校であるかつやま子どもの村で教員として働いている。父は、プレマ株式会社代表取締役の中川信男。

失敗を積み重ねる

投稿日:

子どもたちの生活のなかには、数え切れないほどの失敗がある。そして数え切れないほどの学びと喜びがある。さまざまな経験をし、失敗をしてきた大人の私たちは、その経験をもとにたくさんアドバイスをしたくなる。しかし、その助言の一つひとつが子どもたちの学びや喜びを奪ってしまうことに繋がってはいないだろうか。

私が担当しているプロジェクト「くいしんぼうキッチン」では、毎週のようにパンを焼く。私自身、このクラスを担当するまでは、パンづくりというと、すごく手のかかる難しいものだと思っていた。けれども、これだけパンを焼いていると、さすがにパンづくりの基本がわかるようになる。すると、子どもたちにいろいろ口を出したくなる。クラスが始まった6月は、パンを焼いたことなどほとんどなかったため、あれこれ言いたくなることもなかった。しかし経験を重ねて知識がつくと、「ここはこうしたほうがいい」や、「時間がないからその工程は省こう」などと口を出してしまいたくなる。「料理教室」であればそれでもいいのかもしれない。しかし私が教師として働く「かつやま子どもの村」のプロジェクトではそうはいかない。子どもたち自身が考え、実践し、うまくいかなければ新しい方法を考えてまた挑戦する。それこそが子どもの村の学びの強さであり、トラブルに遭遇したときに柔軟に対応する力に繋がっていく。ところが、頭ではわかっていても、実際には「時間内につくりあげておいしいパンを味わってほしい」という気持ちが前に出てしまうこともある。

2学期からパンを焼く活動に加えて、パンを焼く窯づくりをすすめている。ただつくるだけではなく、どんな窯にすればいいのかを考えるところから、子どもたち自身が手がけている。最初はどんな形にするのがいいのかもわからず、レンガを2段の四角に積み重ねた窯をつくった。その窯でパンを焼いてみると、窯内部の温度が上がるまでにとても時間がかかった。そこからさらに試作をおこない、現在の3号機では、焼き床を小さくし、空気穴、焼き床のフタ、煙突がついたものになっている。これも最初から大人が「空気穴はつくらないの?」「フタはなくていいの?」と声をかけることもできたが、それでは子どもたちの本当の学びにはならない。自分たちでつくった窯でパンを焼いてみてはじめて、フタや空気穴が必要な理由を知る。そうやって努力して完成させたパン窯で焼いたパンはきっと今まででいちばんおいしいパンになるだろう。

失敗をさせてあげられる大人

日々の生活のなかにはたくさんの失敗がある。私たちがよかれと思ってしているアドバイスが、子どもたちの学びや喜びを奪ってしまうこともあるだろう。だからこそ、私はたくさん失敗をさせてあげられる大人でありたいと思う。これはとても難しい。私自身も一緒に学んでいきたい。

SNSが主流になり、さまざまな世代、立場の人が簡単に情報を得ることができ、拡散できる時代になった。そんな社会のなかでは、一個人のミスが多くの人に知れわたり、小さなミスに見合わない大きな批判や誹謗を受けるなど、その後の人生に影響することも少なくない。こういう時代だからこそ、思いきり失敗できる環境をつくってあげる必要があるのではないだろうか。間違いを許されない環境で育った子は、大人になったときに「自分も厳しく育てられたから」と、他人の間違いを許せない人間になってしまうだろう。逆に小さいころにたくさんの過ちを認めてもらい、そこから学んだ子は、他人の失敗にも寛容でいられるのではないだろうか。「失敗は成功のもと」。大人も子どもも失敗から学ぶ。誰もが知っているこの言葉を、本当の意味で受け入れることの難しさを日々感じている。

- 自由教育ありのまま - 2020年12月発刊 vol.159

今月の記事

びんちょうたんコム

累計122万件出荷!自然食品、健康食品、スキンケア、エコロジー雑貨、健康雑貨などのほんもの商品を取りそろえております。

びんちょうたんコム 通販サイトへ