私の担当しているクラス「くいしんぼうキッチン」は、11月中旬に京都へ出かけた。「かつやま子どもの村」では、学期ごとに遠方まで泊まりがけで見学に行ってもいいことになっている。もちろん行くか行かないかは、そのクラスのメンバーで決める。コロナウイルス流行以前は1年に2~3度、旅行に行くクラスが多かった。見学先は子どもたちが本やインターネットで調べ、クラスの全員で話し合って決める。
年度始めに1年間でやりたい活動を話し合ったときから、「パン屋さんにパンづくりを教えてもらいたい」という意見が多くあった。その希望を叶えるために、父にパン屋さんを紹介してもらった。パンづくりを教えてくださったのはさまざまな種類のパンを販売する「ブラザーベーカリー 三条店」さん、お店の案内とパンづくりのお話をしてくださったのは、動物性の素材を使わず、雑穀や天然酵母を使ったパンを販売する「ブランジュリ ロワゾ―・ブルー」さんだ。また父の経営する「プレマルシェ・オルタナティブ・ダイナー」では、ヴィーガンのバーガーをご馳走してもらった。そのほか金閣寺と上賀茂神社、大阪の国立民族学博物館も見学した。多くの方々の協力のおかげで、とても内容の濃い旅行になった。
知的好奇心の強い子どもたち
ブラザーベーカリーでは、生地の中にあんこやカスタードクリームを包んで成形する方法や、生地をこねる機械と、うすく伸ばす機械の操作を教えてもらいながら、本物のパン屋さんの仕事場を見学させてもらった。
「がっこうでつくったのより、生地がもちもちだった。生地をきかいでぺっちゃんこにしてた。うすっぺらいのに、手でさわってもやぶれないのがすごい」
「パンの生地をこねるきかいがあって、なんびょうかたったら、はやさがかわっていって、すごいなとおもいました」
「じぶんでたべたものでレシピをつくれるのがすごい」
これらはすべて1・2年生の作文からの抜粋だ。自分たちのパンづくりと違うところをたくさん見つけて、みんなとても楽しそうにしていた。
ロワゾ―・ブルーでは、グルテン、卵、乳製品などのアレルギー体質の人でも食べられるパンをつくっている理由や、人間の身体はもちろん、ほかの生物や地球環境にも優しい食べ物を選ぶことの大切さ、食べ物を自分たちでつくる必要性など貴重なお話を聞くことができた。また、特別にパンの試食もさせてもらった。自分たちのつくったパンとの違いに驚き、「どうしたらこんなにおいしくできるんですか?」と質問をする子もいた。
「ロワゾーさんのパンを食べたあと、元気になった気がする。食べられる薬みたいなものです」
「アレルギーの人も食べられたら、みんなが食べられるから、みんなうれしいとおもう。はじめてチーズやたまごをつかってないパンやさんにいった。どうぶつもかわいそうじゃなくてよかった」
難しい話もあったが、「人間だけの問題じゃないね」「ロワゾーさんは、優しいパンをつくっているんだと思った」と、それぞれの子が自分たちなりにメッセージを受けとっていた。
子どもの村には、知りたがりの子が多い。今回の旅行でも実際の仕事場を見学して、お店の方にたくさん質問をしていた。だからこそ学びも多い。世間では学習に対して消極的な子が増えているという。子どもの村の子たちは、プロジェクトが大好きだ。プロジェクトでは自分たちで頭と身体をつかって体験する、自分たちで調べて、つくって、たしかめる。また、今回紹介したようによく学校外に出かけて、実際に見聞きする。このように、体験を通じて学ぶからこそ、子どもたちは学習を好きになれる。何を学ぶかも大切かもしれないが、どのように学ぶかもとても重要なのではないだろうか。
※同月号の特集「体験から学ぶ子どもたちの京都パン作りの旅」でレポートを掲載しています。