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自由教育ありのまま

「日本でいちばん楽しい学校」で新任教師がみた子どもたち

学校法人きのくに子どもの村学園かつやま子どもの村小中学校教員

中川 愛 (なかがわ あい)

かつやま子どもの村小中学校、きのくに国際高等専修学校を経て、立命館大学文学部卒業。高校生時代に東ティモールという国と出会い、残酷な歴史を背負いながらも、笑顔が絶えない東ティモールが大好きになる。「東ティモールのことを少しでも多くの人に伝える」ことを目標に、2019年度4月から、母校であるかつやま子どもの村で教員として働いている。父は、プレマ株式会社代表取締役の中川信男。

パンを材料から自分でつくる

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私の担当するクラス「くいしんぼうキッチン」の今年のテーマのひとつが「パンの材料を自分たちでつくる」だ。小麦や砂糖、塩、天然酵母づくりから、子どもたちが担当する。2学期が始まって最初の大きな仕事は、塩づくりに決まった。今回はその様子を紹介する。

自由すぎるお昼ごはんづくり

「くいしんぼうキッチン」には料理の好きな子が集まっているので、お昼ごはんは自分たちでつくったサンドウィッチとピザをビーチで食べると決まった。子どもたちは毎週のようにパンをつくっているため、食パンとピザづくりは順調に進んだ。しかし、ピザづくりのトッピング作業の際に、私は驚く。

この日はトッピング用に、さまざまな材料を用意してあった。ピザソース、ベーコン、ツナ、ピーマン、マッシュルーム、チーズなどに加え、デザートピザ用のフルーツの缶詰、バナナ、チョコソースなどである。子どもたちは一人ひとり、生地を好きな大きさに伸ばし、トッピングする。大きく伸ばしてノーマルとデザート用の材料を半分ずつのせる子や、生地を2つに分けてのばし、2枚のピザをつくる子もいた。そのなかで、ノーマルとデザート用の材料を全部まぜこぜでトッピングしている子が何人かいた。1・2年生の小さい子が多く、ノーマルピザ用の具にフルーツをのせ、チョコソースをたっぷりとかけていた。

子どもたちがのせるまえに気づいたら、止めていたかもしれない。しかし、気づいたのが遅くてよかったのだ。

大人は、よかれと思ってアドバイスをしたくなる。しかし、子どもたちからすると、「やりたかったことを大人に止められた」という感覚が残るだろう。つくったピザがおいしくないとしても、その経験からの学びがある。

これはピザづくり以外でも同じだ。大人にそのつもりがなくても、子どもたちの学びの機会を奪っている可能性もあるだろう。ちなみに、その〝まぜこぜピザ〟は美味しかったようで、子どもの味覚は実に不思議だ。

学校からバスで50キロほど走り、海岸に着くと、みんなでつくったごはんを食べた。そのあと、塩づくりについて本で調べた子がクラスのみんなに海水を汲むポイントを説明し、できるだけキレイな水を汲むように伝えた。

グループに分かれていたので、バケツの持ち手にひもをつけて投げ入れたり、ペットボトルで汲んだり、腰までつかってバケツでくんだり。子どもたちはグループごとに様々な工夫をし、60L以上の海水をタンクに入れて、協力しながら運んで持ち帰った。

次の日は、朝からレンガを積んで即席の窯をつくった。窯が完成すると、いよいよ塩づくりがはじまる。コーヒーフィルターを使って大量の海水をろ過し、火にかける。「薪もっと割って!」「卵パックの上に木を置いた方がいいよ」など、プロジェクト中は、子ども同士で教え合ったり、相談したりして活動が進んでいく。1日かけて海水を煮詰め、ろ過するところまでが終わった。

さらに次の日、本炊きをした。あっという間に塩の結晶が出てきた。「塩が出てきた!」「白くなってきたよ」と、どの子も嬉しそうな表情に。にがりをさらしで絞って、乾燥させたら、やっと手づくり塩が完成する。できあがった塩をなめてみると、市販のものよりもしょっぱかったが、鍋に残った塩を「おいしい」とずっとなめている子もいた。

自分たちでつくったものを食べているとき、どんな子もとても幸せそうな顔をする。つくっている間は、大人は手を出せないし、ヤキモキするときもある。それでも、その瞬間を間近で見ていると、それまでの苦労も報われる気持ちになる。経験を通して成長していく子どもたちとの日々は、本当におもしろい。

塩づくり

日本文学を学ぶと決めて進学した大学では、まわりの学生とのギャップを感じた。国公立の滑り止めとして入学した子もいて、授業にやる気のない子が多かった。楽に単位の取れる授業が人気だった。「入りたくて入ったわけじゃない」と自分の人生をまわりの人間や環境のせいにする人が多かった。将来の夢について話しても、「仕事とプライベートをきっちり分けたいから公務員になりたい」とか、「考えてない」という返事が多かった。子どもの村にいたときは、日常会話で将来の夢について語り合う機会も多かったため、とにかく驚いたのだ。

子どもの村の卒業生は自分で進路を決めるので、自分の人生を人のせいにはできない。だからこそ、選択を間違ったとしても、いい方向に変えていこうと考えられる。そして、自由に決められるからこそ、幅広い分野に進んでいく。卒業後に仲間と久しぶりに会って、互いの近況を語り合うと、いろいろな話が聞けてとてもおもしろいし、自分の考えが大きく変わるような話もできる。今の状況では自由に会うのは難しいが、次に仲間たちと語り合える時間を楽しみにしている。

- 自由教育ありのまま - 2021年11月発刊 vol170

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