血管を見る3種類の検査
細胞にもっとも近く、血管の99%を占める毛細血管の形と、その毛細血管内の血液の流れ具合を侵襲なく観察する検査が、『指先血流検査』です。爪の根元の毛細血管を観察することで、全身の毛細血管の状態が推測できます。毛細血管の状態は食生活や運動、睡眠などの影響を受けやすく、生活習慣を正すことでいち早く改善します。悪い要素を持つ人の毛細血管は、形が変形したり、血流が滞っていたり、血管の周りが曇っていたりしますが、その状態を観察できるのです。
日本人の死亡原因の統計では、1位の癌に続いて2位に心疾患、4位に脳血管疾患が挙がっています。この数字を見ると「動脈硬化」が日本人の死亡原因に大きく関わっていることがわかります。動脈硬化は脳梗塞・心筋梗塞のリスクにつながるだけでなく、すべての臓器・組織を傷害します。
自覚症状がないことから動脈硬化症は「沈黙の殺人者」と呼ばれますが、動脈硬化と診断される前に、まず血管内皮の機能低下が起こるとされており、その血管内皮機能の状態を見るのが『血管内皮機能検査(FMD)』です。FMD検査は、腕を圧迫し、開放後どれだけ動脈が広がるかを超音波で見る検査です。この検査は腕の圧迫感を感じますが、やはり侵襲性はありません。
動脈の状態を非侵襲で即座に調べられる検査が、血管年齢測定検査(CAVI)』です。動脈は血液を全身に送るポンプの役割をしていますが、ポンプ内側の圧力(血圧)が変化したときの膨らみ具合(CAVI値)を見ることにより、ポンプのしなやかさ(動脈の固さ)がわかります。同時に足首の血圧を測定し、腕の血圧と比較することにより、動脈の詰まり具合も測定できます。この検査では動脈の固さと詰まり具合のほかに、健康な同年齢・性別の平均値から導き出した値を「血管年齢」としてお伝えしています。
「血管の状態(動脈の固さ)」と「血管内皮」の状態を両方調べれば、さまざまな段階と角度から動脈硬化症、脳梗塞、虚血性心疾患発症のリスクを知ることができます。
循環器疾患は高血圧、脂質異常症、糖尿病のほか、喫煙、肥満などがリスク要因となりますが、それらのほとんどがPBWF(プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工することなく食べる)の実践で改善が可能となります。特に循環器疾患はPBWFの食事法で早く、劇的に改善効果を得られます。
根本治療することこそ重要
アメリカで開催される国際プラントベース栄養学ヘルスケア会議に毎年出席しています(2020年はリモート開催)。この学会のスター的存在のエセルスティン先生は、バイパス手術やステント手術で有名なオハイオ州の病院の外科医ですが、手術不能といわれた末期の心臓病患者のグループに対して、PBWFの食事指導をおこない、心臓病を改善させたことで有名です。
どんなに外科手術の技術が進歩しても、生活習慣を改めて血管(身体)の状態そのものを改善しなければ、またどこかの血管が悪くなります。病気になった部分ではなく身体をWHOLEで改善するように努めることが根本治療であり、そのシンプルな方法がPBWFの食事法の実践です。