授乳と離乳と粉ミルク
アメリカ小児科学会(AAP)は、少なくとも生後1年まで母乳栄養を続けるよう推奨しています。WHOは少なくとも生後2年まで母乳育児を続け徐々に母乳を減らしながら、2歳半から7歳ごろまでの卒乳を推奨しています。
2年間母乳育児を続けると良い理由として、赤ちゃんの腸は成長過程にあり、母乳からの免疫防御には著しいものがあること。2歳までの子どもには、母乳が大人に比べて高い比率で必要となる脂質の自然な摂取源となること。母乳はビタミンB12をはじめとするさまざまな栄養素を安全に摂取できる方法であることなどが挙げられます。
出生後1年までの母乳はだいたい
・タンパク質5%
・炭水化物60%
・脂質35%で構成されています。
1歳から2歳までは1ポンド(425g)の母乳から1日に必要な栄養を次の割合で供給できます。
・エネルギーの29%
・タンパク質の43%
・カルシウムの36%
・ビタミンAの75%
・葉酸の76%
・ビタミンB12の94%
・ビタミンCの60%
お母さんが可能であり、赤ちゃんが望めば、母乳育児を2歳以上まで続けると良いと思います。
もし1歳以前に離乳させる必要がある場合は、他のミルクか人工乳での代用が必要です。どうしても母乳が不足する場合は、スクリーニングされたドナーの母乳を適切に管理し提供される母乳バンクという仕組みがあります。信頼できる団体を通じての母乳提供は人工乳よりも良い選択肢となり得ますので調べてみると良いと思います。
人工乳を選択する場合は、オーガニックで遺伝子組み換えでない大豆由来の製品を選ぶようにします。大きい子どもや大人のために売られている豆乳と大豆由来の人工乳は別物ですので、赤ちゃんには赤ちゃんに必要な栄養素が充足可能な大豆由来の人工乳を選んで与えます。
アメリカで大豆由来の人工乳を使用している赤ちゃんは、母乳や牛乳由来の人工乳を与えられている赤ちゃんに比べて、アルミニウムの摂取量がはるかに多いことが指摘されています。これは大豆由来の人工乳の製造過程でミネラルを添加する際にアルミニウムが一緒に混入していることが原因であるとわかっています。しかし、大豆由来の人工乳を使用している赤ちゃんのアルミニウムレベルは、国際連合食糧農業機構の定める許容上限の25%に過ぎません。アメリカ小児科学会は大豆由来の人工乳は満期出生児(39週から40週までに生まれた新生児)には安全だが、未熟児には安全ではないとの見解を示しています。大豆由来の人工乳は牛乳由来の人工乳に比べいくつかの利点があり、早期に牛乳のタンパク質に暴露される危険性のほうがはるかに大きな問題です。低アレルギー性の牛乳由来の人工乳を薦める専門家もいますが、いくつかの研究で大豆由来の人工乳は牛乳を加水分解した人工乳に比べ免疫反応が少ないことがわかっています。日本で入手可能な大豆由来の人工乳はごく限られており、日本の大豆由来の人工乳のアルミニウム混入については調査をおこなった研究者がいませんので本稿で言及することができません。
1歳を過ぎてからの離乳であれば、人工乳は不要で他のミルク、特に牛乳を与える必要もありません。2歳になるころ、主な飲み物が水になるころに離乳するのが最も良い流れといえます。植物性ミルクは1歳以降の子どもの食事に組み込むと適切なカロリー、カルシウム、ビタミンD、(強化してあれば)鉄分を担保する簡単な方法ですが、植物性ミルクは必ず与えなくてはいけないものではありません。