数回にわたり、血管や血液の検査のお話をしました。今回はミネラルと有害金属についてお話しします。
微量でも影響が大きい
身体の中で大切な働きをする金属をミネラルと呼びます。ヒトの身体は60種類以上の元素で成り立っていて、そのうち酸素、炭素、水素、窒素が約96%を占め、残りの4%をミネラルが占めています。ミネラルの構成比はわずか4%ですが、微量でも人体の構造や発達、代謝機能の維持、神経や筋肉の働きにも深く関わって、生きていくうえで重要な役割を担っています。
炭水化物、タンパク質、脂質を合わせた三大栄養素に「微量栄養素」と呼ばれるビタミン、ミネラルを加えたものを五大栄養素と呼びます。三大栄養素とビタミンを不足なく摂取していてもミネラルに過不足があれば、それらはうまく働くことができません。ミネラルは少なくても多くても、不調や病気の原因になります。
有害金属とは水銀、ヒ素、アルミニウム、カドミウム、鉛、ニッケル、スズなどの総称です。有害金属が元となった病気といえば、水銀が原因の水俣病やカドミウムが原因のイタイイタイ病などを思い出す方がいらっしゃると思います。大量の有害金属が原因となったこれらの重大な病気とは別に、有害金属は比較的少ない量であっても、身体に入ると、慢性疲労、肝臓・腎臓障害、頭痛、不眠、イライラや不安などの脳神経の障害、しびれなどの症状のほか、ミネラルの働きを阻害することもあります。有害金属は、食品、大気、水道水、食品添加物、タバコ、歯の詰め物、ワクチン、調理器具などあらゆる場面から体内に取り込まれます。
有害金属が蓄積しているかどうかは通常の血液検査などでは診断できませんので、一般的な診察ではほとんどの場合、不調と関連付けて考えることはありませんが、「不調の原因がわからない」「治療をしているのに病気がよくならない」方たちのなかにミネラルのアンバランスや有害金属が影響している場合が相当数あると考えられます。
当院ではミネラルと重金属の測定に「オリゴスキャン」という機器を使用しています。「オリゴスキャン」は手の平をスキャンするだけで体内の有害重金属と必須ミネラル、参考ミネラルのバランスを測定できます。この方法は血液や髪の毛を採取する必要がありませんので、被験者への負担が最小限で済みます。
排出できているかも大切
クリニックでは「オリゴスキャン」の他に、必要に応じて毛髪を採取して有害重金属の検査もおこないますが「オリゴスキャン」と「毛髪ミネラル検査」の結果は必ずしも相関するわけではなく、「毛髪ミネラル検査」で高い値が出た人ほど、体内に重金属が溜まっているというわけでもありません。体内に同じように重金属が取り込まれていても、排出(解毒)できる人とできない人がいるため、「オリゴスキャン」で高い値が出ているのに、「毛髪ミネラル検査」で高い値が出ない人は、体内に重金属が蓄積されているのに排出ができていないと推測できます。クリニックの栄養外来では重金属が身体にどれほど溜まっているのか、どれほど排出できているのかを総合的にみて治療に活用しますが、「オリゴスキャン」はクリニックの他の多くの検査と同様に非侵襲ですぐに結果が得られますので、詳しい解説が必要でなければ、まず検査のみを受けられて、結果を見てから栄養外来が必要かを検討してもよいかもしれません。
怖い歯の詰め物
有害金属が原因の不調で最も多く、影響が深刻な歯の詰め物「アマルガム(水銀)」については、次回以降で詳しく書かせていただく予定です。銀色の歯の詰め物が口の中にある方にはとくにお読みいただきたい内容です。