子どものときのような楽しさを感じているか?
6月にプロのドラマーとコラボして、ライブペインティングのイベントをした。ドラムの音を聴いて踊りながら即興で思いつくままに絵を描くのだ。幅3メートル、高さ2メートルというサイズの大きな絵は描いたことがなかったが、未経験のことをするのはわくわくする。当日、舞台に立っても緊張もなく、挑戦する楽しさしかなかった。内側から喜びが溢れてくる。正解はない。上手下手もない。成功も失敗もない。失敗の恐れがないから緊張もしないのだろう。子どものように「みんな見て」という感じで自由に描けた。大雨の日だったが来客は20人以上。ステージが終わると観にきてくれた人が声をかけてくれた。みんな一様にスッキリした顔をしていたのが不思議だった。「自分も描いてみたいと思った」「自己表現をする!と決めた」「もっと自由に脱力して表現を楽しみたい」「地球と遊んでいる感じに見えた」と感想をもらった。先輩画家が「これまで見ただれよりもライブペイントしてた」と言ってくれたのもうれしかった。これこそ自分のやりたかったことだ。体現できたと思った。
絵の具を手や足につけて、白いキャンバスを汚すように描く。絵を勉強してきた人にとって、私の絵は、絵として認められないこともわかっている。彼らは上手下手の世界に生きているのだろう。でも、上手下手を気にして、描きたいのに描けない人はいっぱいいるはずだ。自分もそうだった。岡本太郎も「上手に描こうとする必要はない」と言っていたらしい。まず、やってみる。とりあえずやってみて、自分がどう感じるか。ただ手に絵の具をつけて、キャンパスに絵の具を置く。それだけで身体が軽くなる。そんなことをみなさんにも、ぜひ感じてもらいたいのだ。自分が解放されると、勝手に周りが解放されていく。解放が伝染していくのを感じるとおもしろい。不景気やコロナ禍など窮屈なことだらけの時代、なにをどうしていいのかわからないなかで、まずできることは、自己解放することだ。人になにかを求める前に、まずは自分で自分を解放する。まじめにコツコツもいいけれど、遊ぶようにいろいろなことを楽しんでみる。喜びを感じてみる。子どものときのような楽しさを感じてみてはどうだろうか。