2012年3月7日朝、スタディツアー4日目。バッタンバンを出発して、パイリン特別市にあるロン・チョク村を訪問しました。今回、提携する地雷撤去団体MAGが地雷撤去する地雷原の面積は、3万8千438平方メートル。すべて村人たちが、農地として使用するために撤去を行います。撤去後の土地を受益するのは2家族、全部で7名。この村は、1979年からクメール・ルージュが占領し、1996年までポル・ポト派、政府軍、ベトナム軍が激しい戦闘をしたところです。15人の地雷被害者、9頭の牛の被害が出ました。最後の地雷被害者が出たのは、1996年。この地雷原の簡単な説明を受けた後、模擬地雷原での撤去方法のデモンストレーションをしてくれます。MAGでは、昨年から新しい撤去の方法を取っています。さて、それはどのような方法でしょうか?
従来の方法は、1人の地雷撤去作業員が1m幅を金属探知機で確認して、少しずつ前進していくやり方でした。新しい方法では、約10mのロープを2本、赤いロープを手前に、青いロープを60cm向こう側へ置き、2本のロープの間の両端と真ん中に60cm棒を3本置きます。その範囲の中を金属探知機で確認していきます。60cmの棒は、手前50cmは赤、その先10cmは白に色が分けられています。これは、金属探知機の探知できる範囲を明確にするためで、金属探知機の丸い円盤の、先の部分10cmは探知ができません。この範囲を探知した後、赤い部分の50cmだけ前進していきます。取り残しがないように、このロープと棒でマーキングした範囲を、確実に金属探知機で探知していかなければなりません。このように横幅10m、縦50cmの部分に金属探知機を当てていき、金属の反応があったところに、丸い印を置いていきます。1度この範囲内を探知し終わった後、丸い印の置いてある場所を、1ヶ所ずつ発掘していきます。丸い印の手前に、三角形をした印を置き、その三角形の手前を掘り返していきます。三角形の縦の長さがちょうど13cmになっています。13cm手前は、反応のない安全な場所なので、縦に掘ることができます。へらのような先が平べったい道具で、下へ掘っていきます。10cmから15cmほど掘った後、先が曲がった道具に持ち替えて、土をこするように少しずつ三角形の下へ掘っていきます。横から角度15度ぐらいで、掘り返していった場合、万が一地雷に当たっても、横からなので地雷は爆発しません。地雷は上からの圧力で爆発するのです。この金属の反応が地雷なのか、ただの金属片なのかは、掘り返して、すべて確認していきます。今回のデモンストレーションでは、金属片が土のなかにあり、反応のあった場所まで掘り返しても地雷が出て来なかったため、再度金属探知機を当て、反応が掘り返した土の中にありました。そこで、磁石を使って、その土の中にある金属片を見つけ出しました。これがもし地雷だった場合は、地雷撤去チームの監督官へ知らせ、遠隔操作による爆破作業で地雷を取り除きます。この作業が終わると、次の反応があった場所へ移り、同じ作業を繰り返していくことになります。
新しい撤去作業は、一度に金属探知機で多くのスペースを探知してしまうことで、1人の地雷撤去作業員が、金属探知機と掘削する道具を取り替える作業の回数を省くことができます。それによって撤去作業員の労力と時間の効率化を図っています。金属探知機は、小さな金属のテスト用のピースを使って、正常に反応するかどうか確認してから、実際の地雷原で使用します。これは、基本的な作業ですが、非常に重要で、もし金属探知機が正常に作動していないのに、地雷原を探知していれば、地雷を取り残すことになり、撤去作業員や、土地を使用する村人たちをも危険にさらすことになります。MAGでは、機械や地雷探知犬などを使った撤去の方法も取っていますが、それぞれの撤去の方法には長所と短所があり、地雷原の状況に合わせて、最適な方法を採用しています。新しい撤去の方法は、僅かな変化ですが、効率性は格段に上がっています。2008年以来の世界的な経済危機と地雷問題への関心の低下等から、カンボジア全体の地雷撤去用の活動資金は少なくなっていますが、1年ごとの撤去面積は、毎年増加しています。2011年1年間でも119名の地雷&不発弾被害者が出ているカンボジアで、「被害者ゼロ、地雷ゼロ」を一刻も早く達成するために、まだまだ挑戦を続けます。
江角泰(えずみ たい)
江角泰(えずみ たい)氏 NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業担当者。 大学時代に、NGO地雷ゼロ宮崎のメンバーとして参加した「テラ・ルネッサンスのカンボジア・スタディツアー」が、テラルネッサンスとの出会い。 現在は、カンボジアにおける地雷問題に取り組む他、弊社が進めるラオス支援活動も担当中。 NPO法人テラ・ルネッサンス >> Premaラオスプロジェクト >> |