オリーブは果実です。しかし、生を食べたことのある人はあまりいないと思います。八百屋でオリーブの実を売っているのをイタリアでも見たことはありません。生そのものを食べるものではないということが理由の一つでしょう。完熟していても口に含み噛み砕くと、苦くて辛くて渋くて飲み込むことはできません。
オリーブの栽培の歴史は六千年とも八千年ともいわれます。果肉と水分、オイル分すべてが混ざったものが薬(塗布・内服)として使われ、のちに分離しオイルだけ料理に使うようになっていきます。暮らしに根づき、使われ続け、長い時間をかけて少しずつ世界中に分布してきました。オリーブオイルに含まれる成分や効用を取り上げて有効な食用油であると注目されていますが、オリーブが長い年月、激しく変化する環境にさらされながらも、淘汰せず、飽きられることなく使い続けられ世界中に広がっていることに私は魅力を感じます。そして、それこそがオリーブオイルが人にとって有用なものの証拠であると思っています。
オリーブジュースの恩恵
果実であるオリーブは、熟すとやわらかくなります。それを種ごとつぶし物理的な処理のみで油分だけをとりだしたものがフレッシュ(生)ジュースです。いわゆる加熱処理をしていないのが特徴です。フレッシュジュースを油として料理に使うので、私たち日本人がイメージする「油」とはちょっと違います。生こその独特の香りなどを持ちつつも、主役となる素材を邪魔せず引き立て、旨みを引き出してくれます。炒めたり、揚げたり、鍋に焦げつきにくくしたりするために加えるためだけのものではありません。良質のオリーブオイルで料理されたものを味わうと、素材のおいしさを、より感じることができます。肉や魚はもちろん、繊細な味わいを持つ野菜と調理することで、余計な調味料不要で、バランスのとれたおいしい料理になるのが、オリーブオイルの素晴らしいところです。
本物を知る
私はイタリアでオリーブ農家民宿で料理修業したことをきっかけに、イタリア人が日常に食べる家庭料理の素晴らしさと、その要がオリーブオイルであることを知りました。オリーブオイルが素材や料理に及ぼす力に開眼し、魅力にはまりました。そして、たくさんのオリーブ産地をめぐり、それぞれの気候風土と大地に根差したオリーブがあることを知ります。在来種のオリーブはイタリアには七百種あるといわれており、品種の違いだけでなく大地と環境によってまったく異なる味わいのオイルが存在します。
そもそも日本人である私は、先祖を遡ってもオリーブオイルというものを一切知らずに生きてきた人種であり、オリーブオイルに関わる全ての情報が細胞レベル、遺伝子レベルで、「無」といってもいいのかもしれません。
これまで自分自身の人生には存在せず、初めての食材として出会ったオリーブオイルは、カルチャーショックであり、気がつくとオリーブオイルを販売する人になっていました。
きっかけは混ぜ物の実態を知ったことです。農家さんがつくるオリーブオイルは、それぞれに素晴らしいのですが、そうでないものを味わい、初めて偽物の存在に気づきました。味も風味もまったく違い、何よりも料理したときにはっきりとその違いがわかります。
本物のオリーブオイルを一人でも多くの方に知っていただきたい。そして、そのおいしさが感動するレベルであるということをお伝えしたい!
という思いから販売者になる選択をしました。八千年の栽培のはじまりから、長い時を経て、やっと日本に到着。これからは日本の人々の暮らしに染み入っていくものと、はっきり申しあげることができます。
アサクラ 代表
朝倉 玲子
(あさくら れいこ)
一般企業、有機農業に携わった後、イタリアに滞在し有機農家民宿やミシュラン三ツ星レストランにて料理修業。オリーブオイル鑑定技能講座で学び、オリーブオイルの素晴らしさに開眼。本物のシングルエステートを探し、エキストラバージン・オルチョサンニータと出会い、故郷会津若松に戻り輸入開始。オリーブオイルの良さと使い方を伝えている。
http://www.orcio.jp