HSTB：エイチエストータルビューティー

『らくなちゅらる通信』には栄養、とくに「PBWF (プラントベースホールフード:植物性の食材をなるべく精製加工しないで食べる)」に関して寄稿してきましたが、私の本業は形成外科医で、患者さまに美しくなっていただくための臨床をおこなっています。おもに皮膚表面を美しくする診療科である形成外科医が、なぜ体の中、「栄養」に着目するようになったかは、折につけお話しさせていただいていますが、今号でも少し触れさせてください。

振り返ってみて

2000年にクリニックを京都・三条京阪に開業、だんだんと老朽化してきた建物の改築工事をおこなっていた最中の2011年3月11日に東日本大震災が発生。地震に伴い起こった原発事故がきっかけとなり、以前はあまり考えていなかった「安全な食べ物とは?」の探究が始まりました。このことが栄養学を学び始めるきっかけとなり、私のバイブルとなるコリン・キャンベル博士の『チャイナスタディ』に出会いました。本にはPBWFの食事で病気を予防し治療ができるということが書かれていて、この本との出会いにより、さまざまな栄養学を学んで頭の中で交錯していた情報をすっきり整理することができ、自分のするべきことがはっきりしました。

自分と娘、スタッフのために学び始めた「食」でしたが、知り得た知識を臨床に照らし合わせると、シミの患者さまでも短期間でスッキリ薄くなる方と、効果を実感するのに時間がかかる方、手術後の回復が早い方など、同じ治療でも結果の得られ方や時間に差があることの理由に気がつきました。栄養状態で治療結果が変わることに気がつくと、さらによい治療結果を提供しなければならない、PBWFを多くの人に伝えなければならないという使命感に駆られ、改築中の建物を一度完全に取り壊し(!)、食の大切さを伝える機能を備えた建物にするために計画を変更しました。ロスは生じたものの、この段階で方向が定まったのは、今のかたちの施設を運営するには最後のタイミングだったように思えます。完成した建物の4フロアを総合して「HSTB:エイチエストータルビューティー」と名づけ「体の中からキレイになる」をテーマに稼働を始めました。

1階のヴィーガン&グルテンフリー「CHOICE」はPBWFを体感していただけるカフェとして運営。2階の「鈴木形成外科」では、シミやあざなどのレーザー治療と、シワやたるみなどのお肌のご相談全般と眼瞼下垂症や二重瞼形成術などの形成外科治療を栄養状態を見極めながらおこなっています。また、栄養外来と小児科を開設し、ほかの施設で治療が難しいとされるアトピー性皮膚炎や発達障害などの難治性の疾患について、(食)生活のカウンセリングをおこなっています。

3階は1990年に私が発案・定義した「メディカルエステ」のフロアになっています。美容の施術はもちろん、クリニックと連動し手術のダウンタイムの短縮やレーザー治療を効率よくおこなうための治療補助の役割を果たしています。

4階は痛くなく結果がすぐ分かる一連の検査を揃えた、気軽に体の状態をチェックしていただける検査室と高気圧高濃度酸素環境にホルミシスを施した「ホルミシスオキシルーム」、そして勉強会やイベントがおこなえる会議室を備えました。