先日、NHKテレビで低用量ピルについての特集番組を見る機会がありました。その番組は月の半分もの約2週間を月経困難症や月経前症候群による腹痛や腰痛、吐き気、嘔吐、貧血、むくみ、イライラにより日常生活がままならず鎮痛剤を飲んで寝て過ごす女性達のインタビューを見せた後、月経に伴う症状に苦しんだことがない人がいますよ!と10人以上の子どもを産み続けている女性を紹介。でもそれは誰にでもできることではないでしょう。それでは、と低用量ピルで月経を止めれば楽になります。と気軽にピルを使用するように呼びかけたのです。
当院にも月経による不調の相談で栄養外来を受診される女性が多くいらっしゃいます。当院では(食)生活習慣の改善指導からおこないますが、やはり婦人科を受診される方が大多数でその場合、大抵鎮痛剤かピルを処方されます。
ピルのチョイスは正解か?
私も出産後生理不順と月経困難症が嘘のように軽くなった一人ですので、辛さを訴えた女性達の気持ちが痛いほどわかります。不快な症状によって薬を使う気持ちもわかりますが、鎮痛剤やピルは症状を抑えることはできても根本原因を取り除いているわけではありませんので問題解決にならないばかりか、不調を薬で抑え続けることにより子宮や卵巣の異常や全身の問題に気付くことが遅れることになりかねません。
女性ホルモンにはエストロゲン感受性のある組織を増殖させる方向に働く卵胞ホルモン(エストロゲン)とその作用を抑えるように働く黄体ホルモン(プロゲステロン)があり、両者のバランスが大切です。エストロゲンとプロゲスチン(プロゲステロン様作用のある合成薬)の合剤であるピルは体内にホルモンができている状態と脳に錯覚させ、排卵を起こさせなくします。すると卵子が発育しませんのでエストロゲンが作られず、子宮内膜も肥厚せず、剥がれ落ちる内膜も少なくなります。排卵が起こらない状態を人工的につくりますので、避妊効果が得られる他、月経不順のコントロール、生理痛や月経前症候群の軽減に効果が期待できるとして急速に処方例が拡大していますが、人工的にホルモンレベルをコントロールすることは極めて不自然です。
以前主に避妊目的に使用されていたプロゲステロン単体またはエストロゲンとプロゲスチン合剤の高容量、中容量ピルでは副作用が起こりやすかったため低用量ピルが開発され、日本でも1999年に使用が解禁されました。低用量ピルの重篤な副作用として血栓による肺塞栓症、脳梗塞、心筋梗塞があるため、頭痛、吐き気、ふくらはぎの痛み、胸の痛み、息切れ、視力の異常などに注意喚起されていますが、くだんのテレビ番組ではふくらはぎの痛みのみを取り上げていました。化学合成されたプロゲスチンによる肝機能障害についても見過ごされがちです。
美容的にはホルモンバランスの乱れが原因とされるしみの「肝斑」がピルの服用をきっかけに発症・増悪するケースを頻繁に診ています。肝斑はレーザーで簡単に取り除くことができませんので長期間に渡ってしみで悩むケースをたくさん経験しています。
自然で簡単な対処方法
そもそも月経に伴う不調は体内でプロゲステロンに対しエストロゲン量が過剰になることが原因で起こります。脂肪や動物性食品、加工精製食品過多で、食物繊維、ファイトケミカル、ビタミン、ミネラルが少ない食事は、エストロゲンの過剰を招きます。その結果、初潮年齢を早め、月経前症候群、生理痛、生殖器官(男性は前立腺)や乳房の異常な成長を促し、腫瘍やがんを形成します。安易に薬に頼るのではなく、まず食を見直すことから始めることが大切です。次号ではエストロゲン過剰と更年期問題について取り上げます。