小児と大人に分けてあざとしみの種類と主な治療法について続けて書いています。今号はどちらにも該当しませんがあざやしみと同様にレーザーで対応できる刺青(入れ墨)とアートメイクの除去について説明します。
刺青とタトゥー
まずは「気が変わった」「飽きた」「結婚・就職など生活の場が変わった」などの理由で除去を希望される刺青とタトゥーについてです。このふたつは日本語と英語の呼び方の違い、入れ墨は和風柄でタトゥーは洋風柄という認識が一般的かもしれません。皮膚に針を刺して染料をいれるという行為も共通していますので間違いではありませんが除去をする場合、どのような入れ方をしているかで仕上がりまでの期間が変わってきます。
「和彫り」といわれる刺青は彫り師が筋彫(図柄の輪郭)を入れることから初め、同じ所に何度も色素を入れる作業を日数をかけておこなっているため色素が密に入っており、除去に年月を要するのに対し、タトゥーは短時間で色素を入れる傾向があり比較的簡単に除去が可能です。密度の他にどのような色素を使用しているかによって除去のしやすさも変わるのですが色については後述するアートメイクの除去と共通するので後に説明します。
アートメイク
タトゥーの技術を応用して眉や目の際などに色素を入れるアートメイクも気軽におこなう方が増えています。ひと昔前に見られた不自然な仕上がりではなくデザイン力も技術も発達しているようですが、そのときデザインが気に入っても流行が変化し気が変わることもありますし、年齢を重ねて皮膚のたるみが出たり、逆に美容外科治療でたるみが改善されるとアートメイクの位置や形を変えたくなることがあり、実際そのようなご相談を多く経験しています。施術時に時間の経過とともに消えるので心配ないと説明されたのにぼやけて広がったり、変色した状態で残ったりして困っているというケースもあります。
除去する方法
刺青、タトゥーとアートメイク除去のレーザー治療では、アイブロウなどの黒っぽい色の場合は1回の照射で消える場合もあり、眼球保護用のコンタクトを使用すればアイラインなど繊細な部分への照射も可能で、施術時に眉毛を剃る必要もありません。刺青・タトゥーについてもレーザー照射で正常な皮膚組織にはダメージを与えることなく、特定の色素だけを破壊し、傷跡を残さず薄くすることができますが、本格的な刺青は取り除くのに年月を要し、薄くなったところで頭打ちを迎える場合もあります。
黒やグレーであればレーザーを反応させやすいのですが、ブラウンやオレンジ系の明るい色素、唇に入れた赤、不要な部分を消すために入れた白や肌色は黒変したり、完全に消えないというケースが出てきます。流行のアートメイクでは自然なライトブラウンが好まれる傾向にありますが、気が変わった場合、消すことのできるインクか確認してから施術を受けることが望ましいです。私のクリニックでは治療を早く安全に進めるためにご自分のアートメイクに使用した色素を持参いただくようお願いします。色素の特定が難しい場合はテスト照射をさせていただくことがあります。
取り除けない色やレーザー照射で黒変する色を使用している刺青には切除手術をおこなう場合があります。とにかく早く除去したいと希望される場合以外は、レーザーでできるところまで薄くしたうえで残った最小限の部分を切除術と組み合わせます。切除術では縫い寄せることができる小さなものは線状の傷跡ができ、大きなものは植皮が必要になり、目立つ傷跡が残ることがデメリットです。