卯年ということで、年始にジャンプしてみた人もおられるかもしれませんね。ウサギが跳ねるように飛躍を目指すという意味で、動きを取り入れてみることも時流に乗る第一歩となりそうです。
学びを考える
さて、ウサギといえば、ウサギとカメの童話を思い浮かべる人もおられるでしょう。
ある日、ウサギとカメが山の頂上を目指して競走することになります。ウサギはカメよりもずっと速く走れるので、途中で油断して休憩し眠ってしまいます。ウサギが目を覚ましたときには、休まず進み続けたカメはずっと先にいて、ウサギは負けてしまう。そんな話です。
教訓として、どんなに能力があっても油断すべきではないこと。また、能力が低くても努力を続ければどんなに強い相手にでも勝てるということ。過信することなく努力を続けることの大切さを説いています。
もうひとつ、別の観方をすれば、ウサギはライバルの存在を見ていたのに対して、カメはひたむきにゴールだけを見ていたともいえます。人との比較で相対的に物事を決めるか、自分の願望という絶対的な指標に向かうかということです。
春ということで、入試に喩えてみましょう。
「どこの学校に行くか」を決めるときに、とかく学年での順位であったり、その指標としての偏差値を基準としたりして、「このレベルなら狙えそう」というところから志望先を決める人も多いでしょう。相対的な指標を参考にしているという点で、ウサギ型の向かい方といえます。
一方で、まず自分がやりたいことを学べる学校を先に決めて、そこに合格するにはどうしていくとよいかを考えて、計画を立てていくというスタイルはカメ型の目標設計といえます。
どちらが正しいということもなく、二通りの決め方があるということです。競争のなかでナンバーワンを目指すのもあり、自分だけのオリジナルのオンリーワンを目指すのもあり。どちらが正解ということはありません。子どもを見守る立場からすれば、「ここの学校に行きたい」と言い出したときには、まずは自分で目標を決めたことを喜んであげたいところ。「そんなの無理」と頭ごなしに言うことは避けたいものです。まずは本人の「行きたい」気持ちに寄り添って、そこに辿り着く道筋を一緒に考えてあげたいですね。
童話ではカメが勝ったところで終わりますが、人生を生きているうえではその後も続きます。ウサギがダメなわけでもありません。人生ではやり直すこともできます。相手を見ることだって必要です。人は独りでは生きられません。コミュニケーションも必要だし、思いやりの心を持つことも大切なのです。
感じるもの
ウサギは前にしか進まない、だから今年は前進あるのみだという観方もされます。動物としては、ウサギの骨格や筋肉の動きからは、後ずさりするよりも体を捻って進行方向を変えるほうが俊敏に動けるのです。そのため、前進するのは大事だけれど、方向転換もときには必要と考えることもできそうです。ちなみに、童話での競走でウサギが休んだことについては、実はウサギには汗腺が少なくて汗をかけなくて体温調節ができないために、動き続けることができないという面もあるようです。
この三年ほどは、思わぬ出来事があって、自分と向き合う時間が増えました。モノの観方や考え方もさまざまだと知らされました。とはいえ、「いま・ここ」に存在することを実感したいものです。どんなかたちであれ、自分の才能を発揮する場があるのを喜ぶことも思い知らされました。
信じる道を進み、ときには止まって軌道修正することを忘れずにいたいものですね。