『でこぼこ道』――昨年リリースしたCDアルバムのタイトル。山あり谷ありの人生のなかで、身にまとった厚い鎧を少しずつ脱ぎ捨てていきました。
私は発達障害ADHD(注意欠如・多動症)の当事者です。その診断を受けたのは二十歳のとき。当時、接客が好きで飲食店でのアルバイトをしていましたが、業務を上手くこなせず、職場を転々とすることに。まず、機械操作の苦手さから、練習を重ねてもレジ業務ができませんでした。また、矢継ぎ早に業務指示を受けると、直前にお客さんからオーダーを取ったことすら忘れ、放置してしまったことも。見積もりが甘く、業務を時間内に遂行することができない。「あれ取って」「適当でいいよ」といった曖昧な指示に混乱して身体が硬直して動けない……発達障害の特性によりこのような困りごとがありましたが、当時は原因がわからず「なぜ仕事ができないのだろう?」と途方に暮れていました。
ある日、職場の上司にかけられた言葉は「本当に要領が悪いね」。高校生のころから周囲に繰り返し言われていたので「やはり客観的に見てそうなのか」と認めざるをえませんでした。インターネットで「アルバイト 要領が悪い」と検索すると、知識検索サービスで同じく要領の悪さを改善するコツを求める投稿を見つけました。「やる気が無いだけでしょう?」といった言葉が並ぶなか、「同じように悩む友人が、発達障害だと診断されていた」という回答がありました。「これだ!」という直感のもと、ADHDの簡易診断を受けたところ、「幼少期から忘れ物が多い」という項目があり、まさに自分に当てはまると感じました。病院で診断を受けた際、医師に「飲食店でのアルバイトは、あなたにとって相当大変だったと思う」と言われました。やっと辛さをわかってもらえた……という安堵感から、涙が溢れました。
はじめて鎧を外した瞬間
診断後、親や友人にも打ち明けられない日々が約一年続きました。しかし、就職活動のキャンプに参加したとき、メンバーの一人が、勇気を出して発達障害であることを開示してくれました。そこで初めて自分以外の発達障害者に対面したことで、発達特性による失敗や悩みを心置きなく話すことができました。そして、キャンプの終盤、参加者全員の前で話す時間に、いつのまにか私は障害をカミングアウトしていました。「どんなあなたでも受け入れるよ」という温かいメッセージを、スタッフや仲間の傾聴の姿勢から感じ取ったのでしょう。「本当の自分を見せた結果、嫌われてもいいや」。障害を隠すことで、どこか別人を演じているような気持ちだった自分が、初めて鎧を外した瞬間でした。体が軽くなった感覚を今でも覚えています。「自分の弱さと向き合い、開示する姿を見てすごく勇気がわいた」という言葉ももらいました。
解放した姿をライブで見せて
発達障害があると、得意なことと苦手なことの差が大きいと言われており、それを「発達凸凹」と表現したりします。周りの方と、一緒に仕事をしたり、良い関係性を築こうとしたりするなかで、「できないこと」を見せざるを得ない場面が多いように感じるのです。
『見せたい弱さ見せたいな見せたくないないな――』オリジナル曲『かくれんぼ』の歌詞通り、私は、まだまだ弱さを見せることに葛藤してしまうこともあります。でも、私はピアノを弾きながら歌っているとき、最も己の心を解放でき、素肌に近い自分を自然と見せられている実感があります。
弱さを初めて打ち明けることができたキャンプのように、音楽ライブを通じて、『鎧を外してもいいよ。どんなあなたでも大丈夫』というメッセージを伝えられたらと思っています。あなたの心に閉まっていたものが、曲を通じて、フッと出てくるかもしれません。