人智を超えた癒しの領域

ヒプノセラピーでおこなっている年齢退行療法について、今回は少しお話をさせていただきたいと思います。

ヒプノセラピーのなかでも、年齢退行療法がすることは、まず顕在意識と潜在意識が統合された深いリラクセーション状態へと誘うこと。無意識の領域へとアクセスし、暗示やイメージを用いながら意識の変革や再構築を行っていくプロセスのなかで、今抱えている問題の原因がどこにあるかを探り、その過去の記憶をプラスのイメージに書き換えていきます。潜在意識のなかに、問題の原因がわかり、その問題の解決策がわかるという、人智を超えた機能が備わっているのです。

私たちの脳は、実際に私たちが経験してきた出来事と、潜在意識のイメージのなかで見ているものとの区別ができないので、イメージのなかで過去に遡り、未解決だった出来事を解決し、ネガティブに植え込まれた経験をポジティブなイメージに書き換えていくことによって、抑圧されていたインナーチャイルドを解放し、癒していきます。そうすることで、今の生き方、思考パターンというものを改善していくことができるのです。

人の記憶とは、脳の中に記銘され、貯蔵され、想起されるという3つのプロセスからなっていますが、私たちが思い出し、想起するたびに、固定されていた記憶は不安定な状態になります。その思い出したときの価値観や見方、表現方法などによって新たな関連づけがなされ、再び貯蔵され固定されていくのです。

このようにして原初の記憶は、その骨組みだけを残して、たえず歪められていくものなのですが、それを利用して想起された記憶を再固定する際にプラスのイメージに塗り替えていくのです。

私たちはみな、良いものも悪いものも含めて、さまざまな思考パターンを持っています。それらは過去の経験からできあがっていて、似た状況を与えられたときに、条件反射的に感情や身体の感覚がよみがえってくるのです。

「思い込み」が変わると引き寄せる現実が変わる

年齢退行療法は、幼少期潜在意識に固定化された観念を書き換え、実際に過去に起きた出来事や未解決のストーリーをポジティブに完結していきます。当時は言えなかった気持ちをイメージのなかで言っていく、相手に吐き出していく。そのときできなかったことをやっていく。満たされなかった思いを満たし、愛されなかった記憶を愛された記憶に、認めてもらえなかった記憶を認めてもらえた記憶に書き換えていくことで、安心感と愛と信頼に満ちた気持ちを新たに追い込み直し、記憶の再構築をおこなっていくのです。

催眠の間、脳と神経系は具体的な感覚的知覚で満たされていますが、非常に本物と近いために脳の中に刻み込まれます。これにより、実際に体験したことが無意識の記憶のなかに組み込まれるのと全く同じ方法が引き起こされます。人がリラックスした状態にあると、その心はより簡単にイメージに適応し、暗示されたビジョンを本物として受け入れるのです。

私たちはみな「思い込み」によって苦しんでいます。信じたことが現実を作り出します。思い込みの色眼鏡が現実をそのように色づけして解釈し、またその通りに相手を演じさせ、経験を繰り返すのです。繰り返す経験は、さらに信念を強化していきます。この悪循環からなかなか抜け出せなくなっているのです。

その「思い込み」がいつ作りあげられたのか？

いつそれが作りあげられたのか、なかなか気づけない深層に原因が隠れていたりするのです。ですから、顕在意識ではなかなか気づけない領域へ催眠を利用して退行し、その信念体系を作りあげた原点へと遡り、記憶を書き換えることにより「思い込み」が変わり、引き寄せる現実が変わってくるのです。