妊婦の体重増加制限
妊婦さんが体重計にのって、増えた数字とにらめっこ……。よくある話です。妊婦の体重の増加推奨範囲は、BMI(Body Mass Index)をもとにしたやせ群、普通群、肥満群という体格区分で厚労省から示されていて、妊婦健診でも毎回体重を計ります。二人分食べるようにといわれた昔と違い、いまは自分に合った増加範囲におさまるよう、指導されるほうが普通です。
産後太りたくない、という希望もあいまって、妊娠中の体重増加に敏感な人はかなり多いです。わたしは体重が増えすぎて困った経験はなく、どちらかというと妊娠中のほうがすっきり健康だったのですが、あんまり体重が増えるようだったら、ひょっとしたら産後を気にして、体重が増えすぎないよう食事内容を見直したりもしたかもしれません。
そのように気にされがちな妊婦の体重ですが、制限については賛否両論あります。体重制限しないから/したから、子どもの生活習慣病リスクがあがるという、両説があるんですね。
体重制限があたりまえに浸透したころに、体重制限はいけないという一般向けの翻訳本(当時の最新理論)が出たときには、目を引きました。その本は出版社がなくなったので、いまは絶版です。主張そのものはその後よくみるようになったもので、ざっくりいうと、体重制限された妊婦から生まれた子どもは、低栄養な状況に適応したからだになっている。が、生まれてからは栄養に恵まれることになるので、その後生活習慣病になる確率が高い、というようなものです。
その逆の主張もあります。「母親の妊娠時に体重が増加するほど出生時、幼少期において子どもも太りやすい傾向にあった。(略)この研究が示すのは、ある世代において肥満だと、遺伝子や親の生活習慣を子どもが受け継ぐのとはまた別に、次世代の肥満リスクが高まる」(デヴィッド・ラドウィグ『ハーヴァードメディカルスクール式 空腹解消ダイエット』文響社・2018)。この分野においてこの本がとても優れているから引用したわけではなく、たまたま仕事で読んだから引用しました。
自分のからだに聴いていますか?
いずれの主張も、前提になっているところは、根本的に同じです。結局、妊婦の体重は増えすぎても制限しすぎても子どもが生活習慣病になる。その人にあった、健康的な食生活をすることが一番なのではないのか? という当たり前すぎるところにいきつきます。もうひと声くわえると、外国人ではなく日本人のからだを前提に考えてと、日本の専門家は言うかもしれません。
うちの子は低出生体重児ばかりでした。昔の言い方では未熟児です。わたしが過度に体重制限したわけではありません。逆に、臨月になるとかならず子どもの体重が増えなくなっていくので、子どもの体重が増えるという食品をがんばって食べて、食っちゃ寝してみても増えないものは増えない。わたしの場合は体質的に平均に沿わなかったとしか言いようがないのですけど……。生まれた子どもは毎回元気で、小さく生まれて大きく育ちました。そして今のところ、そんなにジャンクフードにまみれてもいないからか、スリムな健康体です。加工食品や、過度な欧米型の食生活を見直しつつ、ハレとケのバランスよく、おいしく食べていけば問題ないのかなぁと思います。
妊婦さんも、無理なく、楽しく食べてください。食べるのを楽しむ気持ち、おなかの子どもは受けとっています。