新生児を守ってくれる人たち
妊娠28週から出産後7日までの周産期は、胎児・新生児や母体に問題が起こりやすいとされています。そこで、産科と小児科が協力して母子をみる、母体胎児集中治療室や、新生児集中治療室(NICU)をそなえた周産期医療センターが、全国各地にもうけられています。
その周産期医療をささえるお医者様の人手不足が、深刻なんだそうです。厚労省のデータによると、そもそも産婦人科も小児科も、医療施設に従事する医師の数が減っています(社会問題になったからか、産婦人科の先生の数は、やや持ち直しています)。もともと数が減り気味のところ、周産期医療の現場はハードなので、募集をしても人がこないのだそう。ドラマにもなったマンガ『コウノドリ』で現場のリアルがうかがえますが、いつでも医師にオンコールが入る様子は、事実ハードだろうなと思います。
そこまで忙しいのなら、ほんとうにその医療が必要なのか、もう少し整理ができればいいのにと思うところも正直あります。わたし自身、三回の出産はいずれも高齢出産で毎回警告され、三回目の出産のときには、とうとうNICUのある病院に放り込まれてしまいました。結論としては、上ふたりのときと同様、母子ともに入院する必要はまったくなかったどころか、母子の心身の健康にマイナスだったと思っています。ほかにもそういう妊婦さん、いらっしゃるんじゃないでしょうか。わたしの周囲では、母の体重が重い+多少の高齢+お子さんの体重がちょっと基準に足りなくて、NICUあずかりになった人がいます。でもその人、きょうだいを自宅でひとりで産んでるんですね。産院に行こうと思っていたのに、安産すぎて間にあわなかったそうです。なのにもうひとりはNICU。アンバランスだと思いません?
ほかに、わたしの聞く範囲では、早産でNICUを利用するケースが多いです。なかにはとても小さく生まれ、障害が残っているお子さんも。でも補助器具もありますし、NICUがあって、助かってよかったね、と誰もが思うくらい元気な子どもたちです。ただ、この「誰もが思うくらい」は難しい表現で、「誰もが手放しで喜ぶわけではない場合もある」という前提が透けて見えます。
家族ですごせるNICU
必ずしも手放しで喜べなくても「いのちが助かる」いま、家族滞在型のNICUという試みが始まっています。従来の、アラーム音と独特の光に満ちた、機器と保育器が並んだ部屋ではなく、保育器のそばに家族がくつろぐソファがしつらえられ、ハイレゾ音源の自然音が流れ、光にも配慮された、大人ばかりかきょうだいも、新生児と過ごせる部屋なんだそうです。ソファは、NICUを利用したことのある人たちの寄付で設置されたのだそう。その人たちが次に利用する機会はほぼないでしょうに、その必要性が身にしみてわかるからこそ、寄付というかたちで賛意を示したんでしょう。
わたしの入院中のこと、赤ちゃんがNICUにいるママが、夜中にひとり、ベッドですすり泣いていました。母と引き離され、機械と管に囲まれた赤ちゃんのことを思い、自分を責めたり子どもに申し訳なく思ったりしない母はなかなかいないです。助かるからこそ、病院から出た先の生活へとつなぐ必要もあります。退院後、途方にくれることのないよう、家族で過ごせるNICUも、LDR(居室型分娩室)くらい一般的になればいいなと思います。