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GNHの国からブータン人にききました

国際事業部 ブータン駐在員

松尾 茜 (まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

家庭と仕事は両立できますか?

投稿日:

本連載も早いもので開始から1年。任期が終わるため、ブータンのお話は最終回。おつき合いいただいたみなさま、どうもありがとうございました。

今回は30代半ばの私自身が日々考え、もがいている「家庭と仕事の両立」について。ブータンの首都ティンプーで働く女性を中心に聞いてみました。すると、ほとんど「両立できる」「両立せざるを得ない」という答えが返ってきました。ブータンの社会は女系家族。家や財産を継ぐのは基本的に長女で、男性が家庭に嫁ぎます。そのため特に田舎の農家では、一家の大黒柱であるお母さんが家族と財産を守り、家計のやりくりをしています。ブータン人女性はとてもしっかりとしており働き者です。教育を受けた優秀な女性の社会進出も進んでいて、働く女性に対しては、家族や親せきぐるみでサポートをする文化が根づいています。結婚・出産をきっかけに仕事を辞めるというケースは、ごく稀であるように見受けられます。

もがいていると書きましたが、実はフジテレビ系『ザ・ノンフィクション』という番組で、私の人生ドラマが4月ごろ放送される予定です。非常にパーソナルで恥ずかしい内容ですが、ご興味のある方はご覧になってみてください。

生きるために働く

家事を手際よくこなすホームステイ農家のお母さん

6年前、東京での会社勤務時代、毎日デスクでPCに向かって仕事をこなすなか「働くために生きるのではなく、生きるために働きたい」と強く感じました。その後、導かれるようにブータンに来て早5年半。「人として生きること」の本質を見つめ直す時間を持つことができたように思います。例えばホームステイ受け入れ農家のお母さんは「生きとし生けるものすべてへの慈悲の心を持つこと」が何よりも大切と、穏やかに、かつ真摯に語ります。毎日畑仕事をし、乳牛を大切に育て、家族のために働く。村の祭りや催し物では、ご近所同士で協力し合って準備を行う。農家のお母さんたちはまさに「生きるために働いて」おり、「家庭と仕事の両立」という概念はありません。ヒトとして自然な生き方はこれだよなあ、と思いつつ、日本の現代社会でこんな生活を実践するのはなかなか困難でしょう。来月から日本に戻ります。日本社会で、どうしたらブータンの豊かな精神性を保ちながら、家庭と仕事を両立し、生活をしていけるのか?
次回からは、そんなテーマで連載を綴っていきたいと考えています。みなさま、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 

国際事業部 ブータン駐在員
松尾 茜(まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

- GNHの国からブータン人にききました - 2018年1月発刊 vol.124

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