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GNHの国からブータン人にききました

国際事業部 ブータン駐在員

松尾 茜 (まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

重要な決断は、どう下しますか?

投稿日:

ブータン占星術、ザカール

進学、就職、事業の立ち上げ、結婚、出産、それらに伴う引越しなど、私たちは人生で幾度となく重要な決断を迫られます。みなさんは何を基準に決断しますか?私は、5年後、10年後の「自分の理想の姿」を想定し、そこから逆算して「今どうすべきか」を考え、最後は直感と勢いで大きな決断を下してきました。

一方で、「今を生きる」ブータンの人々は、私のように「未来を想像して逆算する」ということはないようです。「生まれたときに、自分の運命はすでに定まっている」という思想が根本にあるため、決断を下す際には、「すでに定まっている運命に、大きく反していないか」を確認することになるのです。また、チベット仏教の教えでは、すべてのエネルギーは因果応報のもとに循環していると考えられ、ものごとを行う際、エネルギーの流れやバランスにより、それに適した日、適さない日があるとされています。それは「ザカール(Zakar)」と呼ばれ、熟練の僧侶たちが占星術によって定めています。ブータンの人たちは重要な決断を下すとき、ほとんどの人がこの「ザカール」を参照するのです。例えば、新しいビジネスを始める際や、旅行に行くときは、適した年月日をザカールから定めます。万が一、旅行の出発日などのスケジュールを変更できない場合は、ザカールで良いとされる日に、旅行の準備をすべて済ませて一度出発したように見せかけ、実際は家に戻ってきて、当初の予定通りの日に出発するのだそう。ブータンの人々にとって、ザカールは重要であると同時に、うまく調整がきくようになっている点も、実用的で面白いものです。

ブータンに来てから、引っ越しの日、上司や同僚の昇進祝い、新入社員の入社日、お葬式など、さまざまな日取りがザカールで決められるのを目の当たりにしてきました。また、結婚相手も、お互いの生年月日を占星術で確認したという話もよく聞きます。それほど身近なザカールは、新聞の朝刊や、国営放送のニュース番組で確認できるようになっています。そして近年、ついにスマートフォンで確認できるアプリまで開発されました。その名も『Druk Zakar』。実はブータン初の、自国で開発されたアプリなんです。何よりも先に占星術アプリが開発されるとは、なんともブータンらしいですね。

私自身、先のことを考えて決断する習慣は変えないつもりです。でも、もしも決断を誤ったと思ったとき、「きっとザカールでは悪いタイミングだったんだ」と思うことで、くよくよしたり、引きずったりせずに、気持ちを切り替えて次の局面に向かうことができるようになった気がします。心を整えるためなら、占星術などの目に見えない力にときには頼り、少し都合の良い解釈をしてもいいのではないでしょうか。それで気持ちが少しでも軽くなり、前向きになれたなら、「いつでもハッピー」なブータンの人たちに、少し近づけるかもしれませんね。

 

国際事業部 ブータン駐在員
松尾 茜(まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

- GNHの国からブータン人にききました - 2017年12月発刊 vol.123

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