苦手な人にはどう対応しますか?

小さな社会の濃い人間関係

ブータン王国は、人口たった70万人の小さな国。国民がなんらかの形で繋がっています。街で石を投げれば親戚に当たるといっても過言ではありません。その分、人間関係が濃くしがらみも多いことを、現地で生活して感じます。それは学校や職場などのコミュニティに苦手な人がいても、逃げ出せない場合が多いということ。では、ブータンの人たちは、自分の苦手なタイプの人がいたら果たしてどのように対応しているのでしょうか。

「基本的に、無視します。どうしても対応しなければならない場合は、話を聞いているふりをしつつも、聞き流します」「その人の、良いところに光を当てて注視するようにします」敬虔な仏教徒で、「怒り」を露わにするのは罪深いことと信じ、基本的に心優しいブータンの人々ですが、もちろん、濃い人間関係のなかで、嫉妬したり、怒ったり、傷ついたり、ということは日常茶飯事。口論している様子もたまに見かけます。しかし、たいてい数分後には笑いに変わっていたり、翌日には何事もなかったかのように普通に接していたりすることがほとんど。ブータンの人たちは「あの人、私のことを根に持っているのでは」「この先、上司とうまくやっていけなかったらどうしよう」などと心配しすぎることがありません。今を生きているように見受けられるのです。小さく濃い人間関係のなかでストレスフリーに生きていくために、ブータンの人たちが仏教の力をかりて自然と身につけた、自分の心をコントロールする方法なのかもしれません。

 

受け流す力と社会の包容力

研修旅行で訪れた日本からの高校生を盛り上げる、ブータンの酔っ払いおじさん。ラジネタン、ゾンカ語で「環境を制するもの」という、なんとも深いニックネームがつけられている

実は、私の勤め先にも、あまり好かれていない人がいます。ランチタイムなど、その人がいないとき、同僚同士で悪口を言ってしまうことも。でも、それが盛り上がって話題の中心になったり、エスカレートすることはありません。ちょっとその人の話をしてから、「でも私たちがああだこうだ言っても、あの人を変えられる訳じゃないんだから、どうしようもないよね。もっと楽しいこと話そう」と話題が変わることがほとんどなのです。

 

また、私の活動するブータンの田舎ハ県では、いつも飲んだくれて、全く仕事をしないことで有名なおじさんがいます(ニックネームはラジネタン。意味は写真のキャプションに)。でもそんな彼は、地域の人たちには嫌われていません。性格がとても明るく、場を盛り上げるのがとても上手なのです。日本から旅行で来た方が偶然そのおじさんと交流した際に「あんな酔っ払いのおじさんも、場を盛り上げるという良い面を見出されて、地域に受け入れられている。日本だったら、のけ者扱いされてしまいそうなのに。ブータンの地域社会の包容力に感動した」とおっしゃっていました。地域ぐるみですら、その人の「良いところ」に光を当てることができるのは、ブータン社会のもつ包容力であるといえるでしょう。

他人を変えることはできないのだから、自分で自分自身の心をコントロールする。一見取り柄のない人も、地域全体で、緩やかに包容する。ブータン流「苦手な人への対応のしかた」、ぜひ参考になさってみてください。

 

国際事業部 ブータン駐在員
松尾 茜(まつお あかね)

東京の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。