先月号のコラムでは、今年4月1日に施行された改正民法により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことを紹介しました。
また、民法改正に先立ち、平成27年に公職選挙法が改正され、選挙権を有する者の年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
このように、民事法の代表である民法と、公法に属する公職選挙法において、20歳から18歳への年齢引下げがなされたわけです。
では、もう一つの重要な法分野である刑事法の分野はどうでしょう。具体的には、少年法においても、適用対象年齢が20歳から18歳に引き下げられたのでしょうか。
結論からいうと、少年法も改正され、今年4月1日に改正法が施行されましたが、適用対象年齢自体の変更はありませんでした。
この改正をめぐって、非常に重要な議論がなされたため、いずれそうした議論を紹介したいと思いますが、まずはその前提として、今回から何回かにわたって、少年法の理念や手続について、ご紹介したいと思います。
少年法の理念
一般に、犯罪の嫌疑がある者について、検察官が起訴した場合、刑事訴訟法に基づき刑事裁判がおこなわれます。そして、刑事裁判で有罪の認定を受けた者には、刑罰が科せられます。
しかし、少年は成人に比べて精神的に未熟であり、非行の背景にも、少年を取り巻く環境や成長過程におけるさまざまな問題が存在しています。また、少年は、精神的な成長の途上にあり、人格的可塑性にも富んでいることから、問題を抱えた少年であっても、適切な支援や教育により、その問題を克服することが十分可能であると考えられます。
そのため、少年について、成人と同様の手続で刑事裁判をおこなうのは妥当ではありません。
そこで、少年の刑事事件については、先に述べたような理念を有する少年法により、手続が進められることになります。
少年事件の手続の概要
では、少年法の定める手続の概略について簡単にご紹介します。
まず、少年の被疑事件について犯罪の嫌疑がある場合、捜査機関は捜査を終えた後、起訴するのではなく、家庭裁判所に送致することとされています(少年法41条、42条)。成人の刑事事件では、検察官が起訴するかどうかを決定する権限を有していますが、少年の被疑事件については、捜査機関はすべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
次に、送致を受けた家庭裁判所において、事案が軽微な場合などには「審判不開始」という決定がなされ(19条1項)、審判が開かれることなく事件が終結します。
他方、家庭裁判所は、審判を開始するのが相当であると認めた場合には、「審判開始」の決定をします(21条)。そして、非行事実の有無や、再非行の可能性などの審理・判断を経て、家庭裁判所の終局決定がなされます。
主な終局決定は、
①「不処分」(23条2項)、②「保護処分」(24条1項)、③「検察官送致」(20条など)です。
②「保護処分」のうちの主要なものは、少年を収容せずに社会内で更生改善を目指す「保護観察」(24条1項1号)と、少年を収容して矯正教育などをおこなうことを目的とする「少年院送致」(同項3号)です。
③「検察官送致」とは、家庭裁判所が、保護処分ではなく刑事処分が相当であると判断した場合の処分であり、この処分がなされると、少年事件も成人と同様の刑事手続に移行します。
次回以降のコラムでは、家庭裁判所でおこなわれる調査や審理などについて、ご紹介したいと思います。