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鍼療室からの伝言

鍼灸師の西下先生による陰陽や自然食。二十四節気など古来の智恵のお話

圭鍼灸院 院長 鍼灸師
マクロビオティック・カウンセラー

西下 圭一 (にしした けいいち)

新生児から高齢者まで、整形外科から内科まで。年齢や症状を問わないオールラウンドな治療スタイルは「駆け込み寺」と称され医療関係者やセラピストも多数来院。自身も生涯現役を目指すアスリートで動作解析・運動指導に定評がありプロ選手やトップアスリートに支持されている。

歩くのやめますか、人間やめますか

投稿日:

「歩くのやめますか、それとも、人間やめますか?」

極端な質問に思われるかもしれません。
しかし、寝たきりで介護が必要となる原因の多くは、変形性関節症や骨折など運動器系障害から。
認知症や脳血管障害などより、はるかに多い現実を知っておいて損はないでしょう。

まずはきちんと歩くこと。
歩かないから筋力が落ちて、おかしな歩き方になる。
歩き方がおかしいから、疲れやすい。
疲れるから、歩きたくなくなる。
さらに歩かなくなって筋力が低下していくという悪循環を招いてしまいます。

足を鍛える

スポーツ障害で、その競技種目では考えにくい部位を痛める中高生が増えています。
運動の基本動作の確認として歩かせてみると、きちんと歩けない子が多い。
かかとを浮かせてつま先で立っていることもままならない。
足の機能低下といえるでしょう。

子どものころ、机に向かっていて落とした消しゴムなどを足の指で拾って母親から叱られたものです。
しかし最近では、このように床のものを拾うことのできない子どもが増えている。
お行儀として「やらない」ことと、能力として「できない」ことは異なります。

こうした足の機能低下は、小さなころから底が硬い靴を履かせてきたことや、幼少期からのサッカーや野球など、おこなうスポーツを早い時期から専門化することの弊害ともいえそうです。
子どもは裸足で遊ばせる。
家の中や公園の芝生の上でなど場所に配慮しつつも、足の裏でしっかりと地面を捉える感覚を磨くことが必要です。

きちんと歩けるようになってこそ、しっかりと走れる。
そうした基本動作ができてこそ、走りながらドリブルしたり、捕球・投球したりといった複合動作ができるようになるものです。

足を鍛えるには、まずは裸足でつま先立ちしてみましょう。
その次に壁やテーブルに手をついていいので、つま先立ちのままでかかとを上げ下げする。
そして、自宅にいる間だけでも、裸足でかかとを上げてつま先だけで歩く。
さらに、直立した姿勢から足指を曲げながら、その力だけで前に進んでみましょう。
足首から上は動かさずに足だけをイモムシのように動かすだけで前に進めるようにします。
この動きにより、足指が強化され、足の裏のアーチも形成されて、重心が安定し姿勢もよくなってきます。

こうした〝つま先歩き〟や〝イモムシ歩き〟は大人にも効果があります。
始めるのに遅すぎることはありません。

正しい歩き方の真実

まずは自宅の近くを10分でいいから歩いてみましょう。
決してがんばらないこと。
10分でいいのに30分以上歩いたり、大股で歩いたり、ペースを上げてみたり、ちょっと走り出してみたり……がんばり過ぎて膝を痛めてしまうなど、続かないのは避けたいところです。

しっかりと大きく手を振って大股で歩くことは、正しい歩き方として多く信じられていますが、勘違いです。
本当かどうか、裸足になって大股でかかとから着く歩き方をしてみるとわかります。
裸足でこんな歩き方をしていたらすぐに膝や腰が痛くなります。
シューズに頼らないとできない歩き方が、人間にとって自然な動作であるはずがありません。

〝正しい〟を疑ってみる。
その意味では、ここでお伝えしたことも疑ってみてください。
そして、〝正しい〟と信じられてきた大股歩きと、つま先での小股歩きの両方をやってみて、自分に合うと思うほうを選択されればいいでしょう。
それが自分に合った正しい歩き方であり、それを続けていくことで自分の足で歩いていけるのですから。

自然界で二足歩行できるのは人間だけ。
歩くことから遠ざかれば、人間でいられなくなってしまうかもしれません。
歩くことは、未来への選択です。

- 鍼療室からの伝言 - 2018年11月発刊 vol.134

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