健康的な生活の秘訣、それは季節感を大切に自然の中で生かされていることを感じながら、日々の生活をきちんと送ることです。
一に養生、二に医療
病気になってからでは遅いという考え方で 「薬より養生」とも言います。病気になってから薬(医療)に頼るのではなく、まずは自身が日頃から養生を心掛けていくことが大切です。医療者の側にとっても、「予防に勝る治療なし」と予防法、日々の養生をきちんと伝えていく心構えが必要です。
養生は「食」「息」「動」「想」の基本から。「食」とは食べ物、食べ方、「息」は呼吸、「動」は運動や姿勢、「想」はモノの考え方やストレスのことです。なかでも「食」は誰もが皆、共通にやっていることなので正しいことを知って、そちらと切り替えていけばいいのだから比較的入りやすいものです。
武道などの伝統文化の世界に「型」があるように、食生活においても基本となる「型」をきちんと知り、活かしていくことで安心できる生活を送っていけるようになるのです。
七草粥は厄払いの薬草粥
新しく育った若菜を入れたおかゆをいただくことで、一年の健康と長寿を祈る風習として「七草粥」が知られています。お正月の食べ過ぎに運動不足で鈍った体調を整えるための薬草を摂るためのものですが、年を越した古い菜を食べることを忌み、元日から正月7日までは菜っ葉ものを食べないようにしていたとも言われています。
古歌に「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」と詠まれた七種類の薬草です。
●セリ…鉄分が多く、古来、貧血予防の 薬草として用いられてきた。
●ナズナ… ペンペン草として知られ、 ビタミンB1、B2や、カロテン、 カルシウムや鉄も含まれる。
●ゴギョウ…母子草のこと。かつては草餅 に用いられていたが、「母と子を臼 と杵でつくのは縁起がよくない」 としてヨモギが草餅に用いられる ようになったとか。
●ハコベラ…ハコベのこと。小鳥が好んで ついばむ草で、タンパク質と鉄分が 多く強心作用があるとされる。
●ホトケノザ…コオニタビラコというキク 科草、健胃・整腸作用で知られる。
●スズナ…カブの葉。カロテンやビタミン C、B2が含まれる。
●スズシロ…大根のこと。消化酵素ジア スターゼ、ビタミンCが多く、消化 吸収を助ける。
このように栄養バランスに優れ、体調を整える効果のある理想的な薬草粥なのです。
古くから「大根どきの医者いらず」とのことわざがあるように、大根の収穫の時期になるとみんなが健康になると言われていました。江戸時代の『本朝食艦』には、大根は「魚肉の毒、酒の毒、豆腐の毒をくだす」としるされています。それだけ胃腸の状態を整え健康維持のために役立てるものは、お正月の時期だけでなく積極的にいただきたいものです。
骨正月と二十日灸
1月20日を「骨正月」と呼ぶ地方があります。お正月の祝い肴も、あらかた食べつくして骨と頭部くらいしか残っておらず、これらの部位を焼いたり煮たりしていただくという意味です。現代の栄養学から言っても、この残り物にはカルシウムやコラーゲン、ミネラルが多く含まれていて美容や長寿に役立つので、まさに「残りものに福」といえます。
また、この日は「二十日灸」といって、お灸をするとよく効くとされています。一年中でも最も寒さの厳しい時季であることから、お灸をすえることで弱りかけた体に芯から元気を取り戻そうということなのでしょう。
代表的なツボは、「足の三里」。膝頭から下の外側、少しくぼんだところにあります。松尾芭蕉の『奥の細道』にも「傘の緒つけかへて、三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて……」と記されていることで知られています。胃腸を整えて、自律神経にも効くツボであり、ここへのお灸は万病に効くといわれています。
昔ながらの知恵を、上手に取り入れていきたいものですね。
執筆 圭鍼灸院 院長 西下 圭一 病院勤務を経て、プロ・スポーツ選手からガンや難病まで幅広い患者層に、自然治癒力を引き出していく治療を特徴とする。 鍼灸師、マクロビオティック・カウンセラー、リーディング・ファシリテーター。 |