とにかく、毎日お片付け。

【Vol.40】ためらい

 2007年の6月にローフードのブログを始めて以来、すごいペースで更新を続けてきた。1日に記事を2本書くのは当たり前、3本書くことも4本書くこともめずらしくなかったのだ。

 それが、更新スピードが目立って落ちて来たのが、2010年の夏あたりからだと思う。

 私のブログは「ローフード」のことというよりも、「ローフードを食べることによって発見した自分」のことを終始書いてきたのだけれど、書いても書いてもあふれだしてきた言葉が、ぷつりと出なくなった。書こうとしても、催眠術で「あなたは手が動かなくなる」と暗示をかけられた人のように、手が止まってしまう。

 それも、つらいことがあった、とか、体調が悪かった、ということはなくて、かつてないほど自分の人生はスピード感があったのである。チャレンジはたくさんあったが、一つ一つ向きあって、取り組み方も残した結果もいいものだった。だから、もっと生き生きとブログ更新してもよかったはずなのだが……。ちなみに、この間、「以前よりさらにお元気そうですね」「幸せオーラ出てますよ」などと言われることは前より増えていた。周囲の人に、調子のよさは伝わっていたのである。

 これって何だったんだろう……? 少し落ち着いてきた今になって思い当たることが一つある。今まで、ブログに綴る私のキャラは、「輝き始めたけど、まだ生きるのがヘタで、とくに恋愛関係はからっきしダメ(でもそこがファンのサポート心をかきたてる)」みたいな、少女性を多分にもっていたように思うところが、最近、明らかに「癒し」があり、「学び」があり、要するに成長して、その結果、よけいな失敗をすることが格段に減った。言いかえると、「失敗ばかりするけど、でも、一生懸命なの、ワタシ」といった、心の中に傷ついた女の子を抱えたキャラでは、もういなくなってしまったのである。

 こういう、今まで自分が身に付けたことがないキャラとして自分を語る言葉を、私はまだ持っていないようなのだ。だって、今までそういう視点で世の中を眺めたことがないから。あんまり痛々しいことをしなくなってしまった自分、言いかえれば
「成功者」(?)に近づいた自分というものに対する、照れもある。かくして、ブログで自分を表現する言葉に、ためらいを感じてしまう私なのだ。女の子が女性へと成熟を遂げて、女らしい曲線を生かした大人の服に袖を通したら、予想以上に似あってしまった姿を見るのと同じためらいかもしれない。

 ホ・オポノポノ初め、世界中の癒しの教えでは、過去のデータを自分の心から洗い流すようにと勧めている。その良い体験が、「もう一度」という、執着心へとつながるからである。私もこのまま、「過去のキャラ」「過去の愛され方」は次第に忘れていくかもしれない。そして私から新たな成熟の言葉が生まれてくるのに、今しばらく時間がかかりそうだ。


石塚 とも

石塚 とも氏
東京都生まれ、慶応大学文学部卒。大手出版社勤務を経てフリーに。2001年、品田雄吉賞を受賞し、映画評論家として活動開始。
2006年、ローフードを推奨する健康法「ナチュラル・ハイジーン」と出会い、体重10キロ減を初めとしてさまざまな心身の変革を体験。ローフードが持つ科学的、社会的、人文学的な魅力に魅せられ、研究を重ねる。書籍、講演、ブログを通じて、ローな自分と世界に起こるさまざまな変化を発信し続ける。
著書に『ローフード 私をキレイにした不思議な食べもの』など。

【Vol.39】片づけて、何を見つけるのか

 「探し物はなんですか? 見つけにくいものですか?」って歌が昔あったけど、片づけて、片づけて、片づけて、そこに何を見つけるのだろう。私の片づけ人生、ちょっと違う局面に入ったみたいで、最近、そんなことを考えるようになった。片づけなければいけないものだらけで山のようだった部屋の、ついに床が見えて来た状態なのかもしれない。そしてその答えは、予想以上に大きく豊かなものだった。

 この夏、突然、「ロービューティジャパン・フィニッシング・スクール構想」というものを思いついた。フィニッシング・スクールというのはイギリスで生まれた花嫁学校みたいなものだが、今版女大学というか寺子屋というか、とにかく、現代を生きていく女性たちが最低限身につけてほしいものを教えようというという試みである。「必修7課目」というのも作っていて、「食べもの(ローフード)」「整理整頓(もの、情報、掃除を含む)」「日本語での非暴力コミュニケーション(自分と相手の気持ちやニーズを正確にくみ取り伝える技術)」「英会話(とにかく基本を身体にしみこませれば、かなりの範囲で会話が可能)」「基本的ビジネススキル(自分の得意なものを見つけ、企画をたてて商品化し、最低の帳簿がつけられるまで)」「セクシャル・アファメーション(女性としての自分を肯定し、異性、同性とどう関わるか)」「コア・ビリーフ・シフティング(自分のイメージをよりポジティブなものに変えていく)」の7つ。8つめの運動は好きなものを各自やってもらう。

 どうしてそれらを7課目としたかというと、それらは、私が今まで学んできて、効果を上げ、言語化して教えられるもので、他の人にも役立つと確信があるものだからだ。

 実を言うと、ローフードを始めとして、これらは、学んでいるときには「好きだ」とか「楽しい」とかほとんど考えていなかった。ただ、目の前に降ってきた、自分の課題だったという気がする。でも、降ってきちゃった以上、一生懸命こなしていたら、それがいつのまにか自分の財産になっちゃったのだ。そしてふと周りを見渡してみると、それは私以外の人も必要としている知識だということが見えてきた。

 つまり、お片づけの後に見えてきたものは「自分のいいところ」そして「他の人にも提供できるもの」だったのである。

 それらは、私が「作ったもの」ではなくて「発見したもの」だったのである。今まですでにあったのに、気がつかなかったものだったのである。こんなに素晴らしいものを持っていたのに(自画自賛?)自己否定のガラクタに埋もれていたときには、まったく気がつかなかったのだ。

 この自分の中の宝物の発見には、さらなるおまけもついた。この発見をしてから、他人をうらやましいと思う気持ちが、ほぼ消えた。他の人の個性も「資産」として見られるようになった。つまり、それが「自己肯定」というもののプロセスなんだと思う。


石塚 とも

石塚 とも氏
東京都生まれ、慶応大学文学部卒。大手出版社勤務を経てフリーに。2001年、品田雄吉賞を受賞し、映画評論家として活動開始。
2006年、ローフードを推奨する健康法「ナチュラル・ハイジーン」と出会い、体重10キロ減を初めとしてさまざまな心身の変革を体験。ローフードが持つ科学的、社会的、人文学的な魅力に魅せられ、研究を重ねる。書籍、講演、ブログを通じて、ローな自分と世界に起こるさまざまな変化を発信し続ける。
著書に『ローフード 私をキレイにした不思議な食べもの』など。

【Vol.38】ビジネスってお金の整理整頓なのね

 お正月休み、せっせと英単語を覚えていた私が夏休みにしていたのは「会計ソフト」のお勉強である。

 私がローフードを始めて4年、本が出版されてから2年。ローフードをめぐる状況は本当に変わった。「友達なくすんじゃないか」と怯えていた「ヘンな食事」は、美しく、健康になれると評判のセレブ・フードへ。お教室やカフェを開きたいと夢を持つ人も増えてきた。ローフードにビジネスの可能性が生まれてきたのである。

 一方、私はというと、『ローフード・フォー・ビジー・ピープル』の著者に「この本、翻訳させてください」とメールを書いてから3年近く。翻訳をしたのが私なら、印刷所で紙を選ぶのも、価格交渉するのも、デザイナーさんに指示を出すのも、お取引先を開拓するのも、直接取引してくれないお取引先に納入するため問屋さんに仲介を頼みに行くのも、箱詰めするのも運送屋さんに託すのも私……。そのあいまに、いつ、誰から、いくら入金があって出金があるのかもれなくチェックしなければならない。お取引先の数、40あまり……。ひょえー、文句をいっている場合ではない~!

 しかし、今ここに書きだしてみてもしみじみ思うのだが、この3年間で、製造から会計まで、ビジネスのいろはを自分で汗かきべそかきやってみて、一通り覚えたことになる。これは経験というか冒険というか、これもまたローフードと同じぐらい一生のタカラになる体験だった。その最後の最後に、会計がきた。今まで苦手だった会計だが、今の会計ソフトというのは、初心者でも実に簡単に導入できるように設計されているのだ。ゲーム感覚で打ち込んでいるうちに、帳簿ができあがってしまう。毎月の現金出納だけでなく毎月のローンや年に1回の保険料の支払いなども管理できるから、家計簿ソフトをつけるぐらいなら本式の会計ソフトを覚えてしまったほうがよほどいいぐらいだ。日々の領収書を財布の中にためこむこともあっというまになくなった。

 そして、できあがった帳簿を見て、自分の財政的アイデンティティとでもいいますか、お金を通して、自分が何を考え、どういう生き方をしたいと思ったのかがきれいに見えてきたのである。あといくら収入が必要で、いつの支出にどれぐらい備えればいいかもわかる。ビジネスって、つまり、お金の整理整頓のことなのね、って思った。冷蔵庫掃除並みに気分が良かった(笑)。

 会計ソフトはテレビでCMを流しているような有名な商品がいくつか3万円前後で販売されている。一度覚えておくと、無駄な買い物もしなくなるし、なぜかお金ではなくて時間があまるようになった。「やみくも」とは「闇雲」と書くわけだが、お金に対して闇雲であったときは、人生計画全体に対してまさに闇雲だったのだろう。


石塚 とも

石塚 とも氏
東京都生まれ、慶応大学文学部卒。大手出版社勤務を経てフリーに。2001年、品田雄吉賞を受賞し、映画評論家として活動開始。
2006年、ローフードを推奨する健康法「ナチュラル・ハイジーン」と出会い、体重10キロ減を初めとしてさまざまな心身の変革を体験。ローフードが持つ科学的、社会的、人文学的な魅力に魅せられ、研究を重ねる。書籍、講演、ブログを通じて、ローな自分と世界に起こるさまざまな変化を発信し続ける。
著書に『ローフード 私をキレイにした不思議な食べもの』など。