ストレスが多く、さまざまな症状に悩まされている方に「反抗期はありましたか?」と聞くことがあります。苦しみが多い方ほど、しっかりとした反抗期を過ごしていないという傾向があります。そこで、反抗期がなかったり、親にあまり反抗できなかったという方には、「ではこれから大人の反抗期をして、本当の自立をしましょう」と言っています。
反抗期が大切な理由
なぜ反抗期が大切なのか、順を追って説明します。
小さいころは、基本的に親の保護がないと生きていけません。親の言いつけ・きまりを守らないと、自分の命が危機にさらされます。また、親から褒められたことは、親を笑顔にするという成功体験になり、ルールとして定着します。個人差はありますが、思春期までは、子どもはたいてい親の言うことを聞き入れます。親のルールを守り、親に見放されないように頑張っていると、もともとは親のものだったルールを、自分のルールとして使うようになっていきます。親に言われなくても、そのルールを守ることが当たり前になります。
ところが思春期になると、自分なりの考え、生き方が芽生え始めます。そこまで具体的でなくても、今までの考え方について、「なにか違う。自分には合っていない」という感覚が出てくるようになります。そして、それまで守っていたルールが窮屈になり、思春期のとても強いエネルギーで、そのルールを壊そうとします。そのルールは(母)親そのものでもあります。親に反抗することで、一気にそのルールを壊して、自分に合った新しい生き方を模索し始めるのです。
思春期の子どもは、親の代わりに、自分が尊敬できる先人、先輩、先生、同級生などの生き方をまねたりして、いろんな失敗を繰り返し、試行錯誤しながら自分なりの生き方、新しいルールを作っていきます。尊敬する人と親が、もし同じアドバイスをしたとしても、親に言われると「うるさい!」と反抗し、尊敬する人に言われると素直に受け入れたりします。それほど親という存在を完全に否定しないと、古いルールを捨てることができないということでもあります。そうやって思春期の強いエネルギーを使って、親から自立していこうとするのです。
反抗期がないとどうなるか
その思春期に、親にしっかりと反抗できないと、親のルールをもち続けることになります。このルールは子どものころは自分を守ってくれていたものなので、ルールを守らないということは大きな恐怖を伴います。さらに、このルールを守らない人をみると、イライラしたり、ありえないと思ったりするようになります。「私はこんなに(苦しい)ルールを頑張って守っているのに、なんでこのルールを守らない人がいるの!?」という怒りです。これは、深層心理では自分もこのルールを手放したいと思っているということでもあるのです。
そうやって古い(親の)ルールに縛られて、自分の「本音」を我慢して押し殺し、やりたくないことをしなければいけないと思っている人がとても多いようです。本音には、体の声と魂の声があります。体の声は、「疲れたから休みたい、おなかがすいた、美味しいものを食べたい、眠たい、心地よい感覚を得たい、不快なものから逃げたい」という感覚です。ストレスが多い人は、「やらなければいけないことが終わってからやろう」「自分より家族のことを先にしてあげなきゃ」といってこれらの感覚を抑え込んで(我慢して)、するべきことを優先しています。気がついたら自分のための時間なんて確保できないまま、一日が終わっていた、という日常を過ごしています。(つづく)