自分は酸っぱい食べ物が苦手で、お寿司は食べられても、ピクルスやお酢自体を飲むことができません。「酢は身体にいい」と聞きますが、どんな効果があるの?(浜松市・すっぱいさいだぁ)
A.疲労回復や、除菌・抗菌のはたらきもあります
答える人 プレマ株式会社 お客様コンサルティングセクション 岸江 治次
新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす時間が増えました。ずっと家の中にいると、体の調子を崩す人も出てきます。また外食もしづらいので、自宅で食事をする機会も増え、今、家庭での食事づくりが見直されています。
マクロビオティックでは「日々の食事から健康をやしなう」との考えが基本です。米などの穀物と植物由来の食材のみの食事で、体の健康はキープできるのです。けれども、おいしさも伴わなければ、その食生活を続けていくことは困難です。マクロビの食事が、肉や卵、魚などを使わずともおいしいのは、「さしすせそ」と呼ばれる基本調味調が、植物性かつ、ホンモノの味わいだからです。
さ(砂糖)、し(塩)、す(酢)、せ(醤油)、そ(味噌)のなかで、人類最古の調味料といわれるのが、酢(ビネガー)です。日本では、おもに米を原料としますが、リンゴやブドウなどから作られる酢もあります。製造の過程はシンプルで、米を発酵させて酒(アルコール)を造ったら、次に酢酸菌を加えて、さらに発酵させて完成します。
この2回の発酵に相当な時間を要するため、合成の酢酸を加えたり、発酵時間を短期間に抑えるため加温して「速醸」するメーカーもあります。しかし、マクロビの観点でいえば、もとの「いのち」から正当に派生する食品を用いることが基本です。そうでなければ、食事から健康をやしなえないからです。自然由来の発酵菌を使って、十分な時間をかけて醸造された酢を日々、摂取することが大切です。原料の米も、農薬なしの有機農法、オーガニックが望ましいでしょう。
ここからは、酢と味覚についてお話しします。味覚神経を伝ったのちに脳が認識できる、味覚の根本となる5要素が存在し、「酸味」「甘味」「苦味」「辛味」「塩辛味」がそれに当たります。酢は「酸味」が際立った調味料です。
東洋医学では「五味は身体全体をもって感じるおいしさ」と定義されます。「五行」といって、自然界の森羅万象を「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素に分類し、この考えを人間の身体にも適用して、「木」を肝臓、「火」を心臓、「土」を脾臓、「金」を肺臓、「水」を腎臓に当てはめる、「五臓」の哲学を導き出しました。「おいしさを身体全体で感じる」とは、肝臓が酸味を、心臓が苦味を、脾臓が甘味を、肺臓が辛味を、腎臓が塩辛味に反応するということです。これは古来より東洋人が実験を重ねて得た知識で、適度な酸味は肝臓の働きを高めます。酸味が極端に苦手な方は、肝臓機能の低下を心配したほうがいいかもしれません。
また酢の効用として大きいのが、疲労回復のはたらきです。食のバランスが崩れたり、過度のストレスを感じた結果、蓄積する乳酸を中和してくれます。余分な脂肪を燃焼してくれるはたらきもあります。くわえて寿司(酢飯)やピクルスなどの酢漬けが日持ちするように、酢には抗菌・殺菌効果が備わっています。ビタミンCの破壊を抑えるので、美肌効果もあります。あとは肉を調理する際に加えると柔らかく、また魚の臭み取りにも効果を発揮します。
いいことづくしの酢ですが、摂り過ぎると身体を冷やすので、ほどほどに。これは陰陽五行では人間は「陽」の存在であるのに対して、酢は「陰」だからです。いずれにせよ、オーガニックの原料を伝統的な製法で醸造した酢を日々、適量ずつ摂取すれば、身体の調子は上向くでしょう。