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インタビュー取材しました。

社会と関わる方法は ひとつだけじゃない
特定非営利活動法人 山吹の会 やまぶき共同作業所 やまぶき組石作業所 理事・所長 織田 味香さん インタビュー

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京都・太秦の「やまぶき共同作業所」は、プレマと深い関係にあります。弊社代表取締役社長・中川信男との縁で、この地に障がい者支援の場を開設した織田味香さん。福祉法制が目まぐるしく変わるなか、数多の苦境を乗り越えてきましたが、コロナの打撃は相当深刻でした。その苦境にいる織田さんたちに頑張ってほしい。皆さんに「やまぶき共同作業所」を知ってほしくて、取材を敢行しました。

 

特定非営利活動法人 山吹の会
やまぶき共同作業所 やまぶき組石作業所 理事・所長
織田 味香(おりた みか)

企業にて電話の交換手として勤務しながら、夜間学校に通って社会福祉を学ぶ。京都の授産所へ転職したのち「女性のための共同作業所を作る」と同僚と意気投合し、2001年に共同で「やまぶき共同作業所」を創設。現在は、男性も通える作業所に。
【連絡先】特定非営利活動法人 山吹の会 やまぶき共同作業所
〒616-8215 京都市右京区太秦組石町10番地
TEL:075-873-1370 / FAX:075-873-1371 ※ 活動時間:10:00~15:30(月~金曜日)

何年も使われていない古民家それが「やまぶき」の出発点

――「やまぶき共同作業所」の創設には、弊社代表取締役社長・中川も深く関わっていると聞きました。

織田 2001年に、障がい者の方が働く場所を、との思いで「やまぶき共同作業所」を開設した際は、嵐電・太秦広隆寺駅近くの建物を使っていました(現在も作業所として使用中)。社会人生活を数年送ったあと、夜間学校で障がい者福祉を勉強し、京都の授産所(障がいのある人が就労または技能の修得に励む場所)で経験を積んだ私は、当時は京都にまだ存在しなかった、女性のための共同作業所を創設したいと考えました。しかし大志はあれど、お金がない。そんなとき、「格安の物件があるよ」と声をかけてくださったのが、中川社長でした。

――弊社の創業地も、「やまぶき共同作業所」と同じく、京都市右京区の太秦組石町。しかも嵐電・太秦広隆寺駅のホームと直結、というユニークな立地でした。社員は駅の入口を抜けずに、出社できてしまいます。

織田 私の父が嵐電を運営する京福電鉄の社員でした。プレマさんのお店が太秦にあった際には(現在は本社事務所として機能中)、嵐電の乗車きっぷの取り扱いがあり、父がよく中川社長のもとへ回数券を納品しに通ったそうです。

あるとき、父が「娘が女性向けの共同作業所を開設したいと言っている」と、中川社長に話したところ、「うちの会社の裏に、いい場所があるよ」と物件を紹介してくださいました。太秦広隆寺駅のホームから直接延びる細路地の奥に、その建物、築70年の町家はありました。長く使われていなかったらしく、内見のとき、大家さんと玄関の引き戸を開けたら、家の中に草が生えていたことを覚えています。それを見た大家さんは、すぐさま「え~っと」と言いながら、自主的に家賃を下げてくださったんです。

――弊社の中川も、まさか室内に草が生えているとは思わなかったでしょうね。

織田 どうでしょう。中川社長なら、家賃交渉も折り込み済みだったのかも(笑)。加えてプレマさんからは、開設直後の売り上げのない時代より、梅干しや木酢液を詰める仕事をいただいています。しかも作業費の相場に対して、大幅に上回る額で今もご発注がある。作業所の活動をずっと応援していただき、中川社長には、本当に感謝しています。

――いえいえ、利用者さん(作業所で就労訓練に励む障がいのある方)が、いつも丁寧にプレマの商品を梱包してくださるので、こちらも感謝しています。
そして、そんなプレマにとって切っても切れない存在である「やまぶき共同作業所」が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境に陥っていると聞いて、今回は取材に伺いました。

織田 コロナで経営が大変なのは、どこも同じだと思います。ただ、うちはプレマさんのほか、お線香など京都の名産品の梱包等も請け負っています。その売り上げが大幅に減ったんです。

京都へのインバウンド需要でここ数年、受注が増えましたが、今は発注も2分の1以下。海外の観光客の減少だけでなく、日本国内でも密集を避けて、法事の開催も控える向きがありますから、線香の売り上げは厳しい状況です。国から緊急の補助金もありますが、うちのような小さな作業所でも、3ヶ月もつかどうかの金額でしかありません。今までにもまして、自転車操業の日々が続いています。

もっと工賃の額を上げたいでもコロナで現状維持も困難に

――太秦広隆寺駅近くの建物に加えて、2017年には太秦の目抜き通り(三条通り)に面した、こちらの新館も竣工されました。京町家を改装した所内は、広々として快適な印象です。この環境だけをみると、作業所の経営は新型コロナウイルス感染拡大までは、順調だったようにも思えるのですが。

織田 「やまぶき共同作業所」は、2006年施行の「障害者自立支援法」で、「就労継続支援B型事業」の認可を受けた、就労系障害福祉サービス事業所です。障がい者手帳をお持ちで、かつ障がいが原因で企業や事業者と雇用契約を結ぶことが困難な方が、ここに通って、軽作業などの就労訓練を受けられています。

この「障害者自立支援法」が施行されるときに、共同作業所の設置基準が改正されました。耐震・火災面での条件が、より厳しくなったんです。それでも法律の施行前に設立された共同作業所には、その例外とする措置が取られました。けれど旧館は昔ながらの木造建築で、耐震、火災面で、非常に心もとない。加えて、障がい者福祉をめぐる法律は、目まぐるしく変わります。今は耐震、火災面をクリアしていても、いつ建物が認可外になるかわからないのです。いろいろ考えて、大きな借金をしてでも、新館を建設することに決めました。

――日常的に福祉に関わっていない、われわれのような人間が見落としがちですが、共同作業所の経営は、なにを原資にしているのでしょうか?

織田 まずはプレマさんのような企業から商品の梱包などの仕事を受注することで生まれる売り上げです。くわえて、自治体から制度に基づいて、共同作業所に補助金が支給されます。
ただ作業所には、軽度から重度まで、さまざまな障がいを持った利用者さんがいます。したがって箱の組み立てや商品の袋詰め、ラベル貼りや梱包といった、誰もがおこないやすい、軽作業が受注仕事の大半を占めてしまう現状があるんです。そういった単純作業は1工程=1円が業界の相場のため、売り上げを立てるのが至難の業。箱100個を組み立てても、100円にしかならないんです。

そして共同作業所の売り上げから支払うのが、利用者さんへの工賃(一般企業の月給にあたる)です。一生懸命に頑張っている利用者さんに、なるべくたくさんの額をお渡ししたいとは思います。でも、うちの売り上げを考えると、国の平均月額工賃の16000円前後(就労継続支援B型事業の場合。厚生労働省の平成30年度調査より)が限界なんです。そして、新型コロナウイルス感染拡大を受けて仕事が激減し、その支払いすらアップアップの状態です。

――国は、金銭的な補助を講じてくれないのでしょうか。

織田 共同作業所の規模と利用者の数に応じて、自治体から補助金が出ます。逆にいうと、利用者が集まらないと支給されない制度なんです。
重度の障がいを持った方は毎日来られない場合が多く、入院して通所できないときもある。また今はコロナウイルスの感染を恐れて、来たくても来られない利用者もいます。売り上げも補助金も減る一方なのに、作業所の規模で雇うべき職員の数は決まっていて、光熱費や家賃も固定費で必要です。新型コロナウイルス感染拡大で経営に悩む、うちのような中小の共同作業所さんは多いんですよ。

利用者の障がいはさまざまなので、職員はいろんな仕事道具を準備している

ボール紙の四角に商品を並べれば、必要な個数に。数を間違えずに袋詰めできる

利用者の障がいはさまざまなので、職員はいろんな仕事道具を準備している

障がいのある人の数だけ社会参画の可能性が存在する

――作業所が請け負う仕事、そして利用者さんも減って、窮地に陥る小規模の共同作業所。この問題は、コロナの影響で明るみになったのでしょうか?

織田 いえもっと以前、「障害者自立支援法」の施行が、中小の共同作業所の経営を、さらに困難にしたといえます。より平均工賃の高い作業所に、国が手厚い補助金を支給し始めたからです。

株式会社や有限会社が障害福祉サービス事業に参入して、大企業が就労継続支援B型事業を運営するようになりました。大きなグループだと、自社でも仕事が回せます。また株式会社の資金をもってすれば、中小の就労継続支援B型事業者が購入できない機械を導入でき、単純な軽作業の効率すら、飛躍的に高めることが可能です。

平均工賃の高い作業所には、毎年、多くの補助金が集まります。機械の導入で納期も早められ、さらに仕事の質も向上します。こうして平均工賃の高い作業所に仕事も利用者さんも集まり、設備投資できないうちのような小規模事業者は困窮を極めます。利用者さんが平均工賃の高い作業所に行きたがるのは当然ですから。

平均工賃の高い作業所の存在は、利用者さんの仕事へのモチベーションにもなります。ただ私たち小規模事業者が、大企業と同じ土俵で戦わないといけないのは、正直しんどいです。

――なぜ国は、そのような格差を生む政策を取るのでしょうか?

織田 障がいのある方も、そうでない方と同じく、参画できる社会を実現しよう。それが、「障害者自立支援法」の理念だからです。障がいのある方も、社会に出て競うことが求められます。「障がいがあるから」では甘えられないのです。作業所も生産性優先です。

でも長年、障がい者福祉の現場に携わってきた私は、どうしても首を傾げてしまいます。障がいを一括りにせず、それぞれの特性を見極めてほしいから。国は私たちB型事業者に、利用者さんが雇用契約を結んで働けるよう、就労支援に励めと言うけれど、障がいの問題で、B型にいたいという人もいます。症状が重くて、ずっと家にこもっているけれど、社会と接点を持つために、一生懸命、うちに来る人もいるんです。また雇用はされたけど、病状が悪化したケースもありました。国の理念だけでは、立ち行かない現実があります。

やはり作業所は就労支援の場だけではないと思うんです。もちろん、仕事はきちんとこなさねばなりません。納期も品質も守るのは最低限の条件です。甘えは通用しません。ですので、私たち職員もしっかり指導します。

作業が早い人も、遅い人もいます。また単純作業が苦手な人もいるので、午前と午後で業務内容を変更する場合もあります。調子が悪そうな人がいれば声をかけ、悩みのサインを読み取れば、プライベートのことでも相談にのります。国は、作業所は就労の支援が主な仕事と位置づけているけど、私は利用者さんひとりひとりと向き合いたい。

「障がいのある人も社会参画すべき」。それはそうだと思います。でも、その「べき」は、障がいのある方の数だけあっていい。新型コロナウイルスの影響で、うちも苦しいです。けれども多くの利用者さんの「べき」を見つけたいから、「やまぶき」に通ってくださる利用者さんがいる限り、私はここを守っていきます。

- 特集 - 2020年8月発刊 vol.155

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