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法の舞台/舞台の法

日常のなかにある法律問題踊る弁護士の活動報告

弁護士/舞踏家

和田 浩 (わだ ひろし)

1977 年新潟県柏崎市生まれ。京都大学総合人間学部卒業。弁護士として、さまざまな分野の事件に取り組んでいる。なかでも、障害者の権利に関する案件に多く携わっている。他方、舞踏家として舞台活動もおこなっている。福祉、芸術、司法の連携について、あれこれ考えている。
縁(えにし)法律事務所 京都市中京区蛸薬師通烏丸西入橋弁慶町224 SOHO 烏丸104 075-746-5482

京都ALS事件(1)

投稿日:

先日、長期間にわたって交渉していた案件が、無事に終結しました。
 
その案件は、筋萎縮性側索硬化症(A L S)の方から依頼を受けた事件です。この方は、人工呼吸器を装着して、自宅のベッドに横たわって生活をされています。顔筋の一部のみわずかに動かすことができますが、身体のそれ以外の箇所は、随意で動かすことができないため、1日24時間にわたって、介助や見守りを受ける必要があります。
 
この方のように重度の障害を有する方がヘルパーの介護を受けるにあたっては、自治体から介護費用の支給を受けることが可能ですが、一般に自治体から十分な介護費用が支給されるとは限りません。
 
今回、無事に終結した案件は、1日24時間(以上)の介護が実現するように、自治体に十分な費用の支給を求めて交渉し、実現した事案です。無事に代理人活動が実り、安堵していた矢先に、京都で衝撃的な事件が発生しました。自宅でヘルパーの介護を受けて生活していたALSの女性が、主治医とは異なる医師に依頼して、絶命したという事件です。
 
報道によれば、亡くなった女性は、40代でA L Sを発症し、京都市内のマンションで、ヘルパーの介護を受けて生活していたとのことです。しかし、女性は、A L Sにより動くことのできない自分に絶望し、いつしか死ぬことを考え出したようです。そして、女性は、安楽死が法的に認められる国で死ぬことを検討したり、主治医に対して、死なせてほしいと依頼したりしましたが、主治医に断られるなどして、成功しませんでした。
 
そうしたところで、女性は、インターネットを通じて自分の望みを実現してくれる医師と出会い、医師にお金を支払うなどして、2人の医師に嘱託して、命を絶ったとのことです。

安楽死?

この事件には、論ずべき点が多数存在しますが、現在しばしば安楽死の問題として取り上げられているためこの点にについてご紹介したいと思います。
 
一般に、安楽死には2種類があるとされます。死期が切迫して苦痛に耐えられない患者に対して致死性の薬物を投与するなどして積極的に死期を早めることを「積極的安楽死」といい、患者に対して延命治療を中止することによって生命を短縮させることを「消極的安楽死」といいます。このうち、消極的安楽死については、それが正当な医療行為としてなされた場合、違法性がないとされますが、積極的安楽死については、原則的には違法です。ただ、積極的安楽死についても、違法性がなくなる可能性について議論されており、親族の希望に応じて積極的安楽死をおこなった医師の刑事責任が問題とされた事件において、裁判所は、(1)患者に堪えがたい苦痛があること、(2)死期が迫って回避できないこと、(3)患者が安楽死を希望する意思表示をしていること、(4)苦痛緩和のための医療上の手段が尽くされ他に代替手段がないこと、という4つの要件を充たす場合のみ、積極的安楽死は正当化されるとの判断を示しました(横浜地方裁判所平成7年3月28日判決)。ただし、これは最高裁判所の判断ではないので、法的な拘束力があるわけではありません。

安楽死ではない

以上の議論をふまえ考えると、今回の京都の事件は、まったく安楽死に該当しないことがわかります。というのも、安楽死というのは、あくまで終末期における患者の死期を問題にしているのに対して、今回の京都の女性については、そのような事情がなかったと思われるからです。A L Sの方は、身体の自由が不可逆に失われるものの、呼吸器を装着すれば、十分に長く生存することが可能です。だから、患者が終末期であることが前提になる安楽死の概念には、当てはまらないのです。
 
では、この事件については、どのように考えることができるでしょうか。次回以降、検討してみたいと思います。

- 法の舞台/舞台の法 - 2020年9月発刊 vol.156

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