新年度、新しい環境に身を置く人もいらっしゃると思います。もしいままで、人間関係でうまくいかないと感じていたのなら、この機会に人との接し方を変えてみませんか? もちろん、いま辛いと思っている方も、ぜひ試してみましょう。実際にやることは、こころを開くことです。いい人をやめて、ダメな自分をみせることです。
研修医として働き始めたとき、最初はなにもできませんでした。知識はあっても(それもあやしかったですが……)、患者さんを目の前にして、具体的にどの薬をどれくらいの期間使ったらよいのか? どのように説明したらよいのか? スタッフにどう伝えて、動いてもらったらよいのか? まったくわかりませんでした。その場にいること自体が邪魔なくらいの存在だったので、マイナスからの出発でした。また研修では、いろいろな職場を転々とします。せっかく学んだことも、それぞれの病院、病棟によってやり方が違います。なかなか馴染めないこともありました。
試行錯誤して気づきました。必要なのは、がんばって〝できる(優秀な)自分〟になることではなく、まず自分を開くことだと。いい格好をしない。大きく見せない。できないことはできないと言う。知らないことは知らないと言う。役に立たない自分を受け入れる。迷惑がられてもわからないことは教えてもらう。言われてみれば当たり前ですが、経験を積んでから新しい職場に移ったときなどは、つい忘れてしまいます。
相手がオープンになって接してきたとき、自分もこころを開きやすくなります。怖がって警戒していると、いつまでも打ち解けられません。早く自分の弱みを見せてしまいましょう。
原因はこころの傷?
いい人のフリをしたり、カッコつけようとしたり、自分を大きく見せようとしたりするのは、幼いころのこころの傷が原因です。
子どもは、母親から無条件の愛を欲しいと思っています。自分のすべてをわかってほしいと思っています。母親から愛情をもらいたかったのに、もらえなかったとき。母親に自分のつらい気持ちを理解して欲しかったのに、理解してもらえなかったとき。その子はありのままのこころを閉ざしてしまいます。もう二度とこの痛みを感じないようにするために、「なんとかしなくては!」とそのままの自分を否定します。親の愛情がもらえない(と感じる)ことは、子どもにとっては死活問題です。恐怖です。なんとか生きていくために、母親の機嫌を読みとり、可愛がられるように、怒られないように、振り向いてもらえるように、不機嫌にさせないように、迷惑をかけないように、お母さんにとってのよい子になろうとします。もらえなかった愛情をもらえるように、がんばるようになります。
成人して社会に出ても、このときと同じ反応をしてしまうのです。対象がお母さんではなく、上司や同僚に変わっただけで、いい人になろうとして、役に立つ人になろうとして、本来の自分を否定して無理してがんばって、できる社会人になろうとしてしまいます。
落ち着いてゆっくり考えてみましょう。あなたがいま、ここに生きているということは、親の愛情があったからです。愛情がなかったら、ここに生きていることはできません。表面的に嫌われてい(るように感じ)ても、無視されていても、自分に関心をもってもらえなくても、きつい言葉をかけられていたとしても、そこに愛情はある(あった)のです。ただ、残念ながら自分が欲しかった形の愛情ではなかっただけです。
もう他人から愛情を求めるのはやめましょう。他人の愛情が感じられないときは「私は宇宙から愛されている」と繰り返し唱えましょう。そして、前回同様、自分のインナーチャイルドに「そう思うよね」といっぱい言ってあげましょう。繰り返していると、こころが満たされていきます。満たされると、こころが開いても怖くなくなります。