この春オープンした大好評のプレマルシェ・ジェラテリアについて代表でジェラティエーレの中川に聞きます。「自然食品の会社がなぜジェラート?」にもお答えします。
若年層に「自然食品」という概念を知ってもらいたい想いがありました。自然食の見解では、甘い氷菓子は「不健康」。でも、原則原理だけを求めている間に、店主も顧客も高齢化していきます。「これでいいのだろうか」という気持ちがあったのがきっかけのひとつです。実際、ジェラテリアを始める前と後では、店に入ってくる年齢層がまったく違います。
もうひとつは食品廃棄をゼロにしたいという想い。メディアで紹介される健康法やダイエット法の多くはマーケティングと結びついており、ある日突然に需要が爆発し、急速に冷める。流行ると驚くほど注文が殺到するものの在庫を持て余すことになる。サステナブル(持続可能)なスーパーフードとしてもてはやされるのですが疑問を感じます。
欧米ではブームになると加工食品として定着する傾向にありますが、日本ではチアシードやアサイーなど、ブームが終わると見向きもしない。この状況を受け入れつつ発展させるために、スイーツの世界に、よりヘルシーでサステナブルなことを持ち込まなければいけないと考えました。
技術で勝てなくても知識は負けない
日本のジェラート屋は、牧場が副業として補助金で始めることが多く、レシピの組み立て方を知らない人が多いのです。糖度、糖の種類による味への影響、混ぜるタイミングなど学べばわかるものですが、オルタナティブ素材さえ知らない。これならすぐに日本一になれる!
と思いました。実際、イタリアンのフードプロデュースをしているシェフなど専門家が続々と訪れてくれています。
ジェラートは通常、安価なサトウキビのグラニュー糖で甘さをつけますが、プレマルシェ・ジェラテリアでは一切使いません。「大切な人に安心して食べてもらえる以外のものは素材として使わない」のは一貫した弊社の姿勢です。とはいえ私は糖を幅広く見ています。一般に脳の栄養とされるブドウ糖は、自然食の世界では単糖だからダメという説も。でもブドウ糖を使うだけで質が劇的に変わります。ある程度の自由度を持てばいいのです。
自然食系のお菓子がおいしくないのは、糖の多様性を否定するから。メープルシロップ、米飴、黒糖などで作ると、すべてその味になってしまう。お菓子にとって糖は重要なファクターです。どの素材を見るにしても、単眼的にならないよう全体を見るようにしています。
私は単なる菓子店をしたいのではありません。心の薬となりうる良質なスイーツを通して食べものの、ひいては心の垣根を越えていきたいのです。兄弟の一人だけミルクアレルギー、夫婦の妻だけベジタリアンなど「食」に制約がある人がいます。周囲にとって小さく見えても、本人には重要で理解されにくいことに、私たちは新しい解を求めがんばります。
本場イタリアにはインスタントフレーバーが何千種類もあります。極論、よそのジェラートは誰にでもできますが、うちのジェラートは、私にしか作れません。ましてや米100%のジェラートなど安定剤すら米由来なのですから(企業秘密)。
いつか食品工場「プレマルシェ・ファクトリー」を作りたいです。ロバの牧場なんかもいいかもしれません。ロバ乳は最もアレルギーを起こさないミルクなので。ジェラート屋が副業で牧場をやったら面白いでしょうね。